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シャイニーストッキング
第5章 黒いストッキングの女4     部長大原浩一
 12 始まりの朝

 ブー、ブー、ブー、ブー…

 朝6時、私の携帯電話のバイブレーター音が鳴り響き、目が覚める。

 その電話は山崎専務からであった。

 「大原くん、朝早くからすまん…」
 急きょメンバーに穴が空いてしまったのでゴルフに来い、という電話であった。
 ただその主なメンバーが今度の吸収合併する某保険会社の役員達だと言われては、とても断れない。

 「ええと、今日の予定は…と…」
 「う…ん…どうしたの…」
 「あ、ごめん、起こしちゃったな」
 急きょ山崎専務にゴルフに誘われて行く事になったのだが、今日の予定が色々あるから調整しなくちゃならないのだ…
 と、ゆかりに矢継ぎ早に言った。

 「うーん、秘書が欲しいなぁ…」
 「えっ」
 「あ、いや、冗談だよ、10年早いわなぁ」
 でも、今日のような事がこれから続くと冗談ではなくなりそうである。

 「でも、これから本部長と向こうの執行役員になるんだから必要かもね…」
 彼女は意外にも真剣な顔をしながらそう言ったのだ。

 「ええと、どれどれ…」
 そしてそう言いながら私の手帳を覗いてくる。

 「少し協力してあげるわね」
 そして私の今日の予定を書き出していった。

 「先に準備しちゃえば」
 「あ、うん、悪いな…」
 「わたしが秘書になっちゃおっかなぁ」
 そんな冗談を言ってきたのだ。

 本当なら私にはそれが理想だが、彼女はキャリア志向であり、今回の新規事業を成功させたら一気に、かなりのステップアップに繋がっていくのである、とても秘書など冗談では済まされない位にキャリアハイのチャンスなのであった。

 「ええと、これと、これはわたしが先方に連絡して調整しておきますから、お昼にでもわたしに電話くださいませ…」
 「ああ、ありがとう、助かるよ」
 「いいえ、ま、後で高くつきますけどね」
 「もちろんだ、任せてくれよ」
 そんな冗談を交わしたのだが、本当に助かったのである。

 「ありがとう、とりあえず行くわ」
 そう言って私は彼女に軽くキスをして、部屋を出た。

 出掛けのキスなど新婚当初でもしたことなかったなぁ…
 少し照れながら私はゴルフ場に向かったのだ。


 7月29日火曜日午前7時過ぎ…
 真夏真っ盛りの暑い朝であった。

 そしてこの朝から私の激動の1週間が始まったのである。


 
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