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シャイニーストッキング
第19章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一
  91 秘書 松下律子(19)

「あ、はい、これも抜群に美味いですよ」
 開き直った彼は、運ばれてきたパスタを指してそう素直に言ってきた。

「本当だわ、美味しい…」
 ひと口食べただけでその美味しさが口の中に広がってくる。

「でしょう、ここのを食べちゃうと他の店でのシーフード系のパスタが物足りなくなっちゃうんですよ」

 確かにそのくらいに美味しい…

「じゃ、わたしメインに白身魚のアクアパッツァを頼んだんだけど?」

「はい、大正解です、最高に美味しいですから」

「あら、そうなんだ、良かったわぁ…
 ていうか、最初からメニューのチョイスもしてくれたら良かったのにぃ」

「あ、いや、それは…
 何度も来ているのを内緒にしたかったから…」

「うふ、そんなこと気にしないのに…ていうかぁ、会社でもあんな感じだったから、今更よ」
 と、わたしは笑いながら言う。

「あ、ま、は、はい、でも本気で松下さんのことを……」

「あら、なんとかなると思った?」

「あ、いや、なんとかしたいって…思った、いや、今も思ってますけど…」
 なかなか彼は諦めようとはしていないみたいである。

「ふぅん、そう… 
 そうなのね、でも、今夜は諦めて…」

 本当にこのあからさまな褒め殺しの口説き言葉は決してイヤでもないし、不快でもない…
 逆にこんな感じはホントに超久しぶりだから、いや、学生時代以来くらいでもあるから、ある意味、新鮮ともいえるのだ。

 それに最大のポイントは、昔のあの大恋愛した元彼に雰囲気等の共通点があるからともいえるかもしれない…

「はぁ、諦め…いや、諦めきれないなぁ…」
 そうポツリと呟いてくる。

「うん、諦めてね、それにいちおうまだ、常務待ちという業務中だしね…」

「あ、はい、でも、だとすればぁ…
 常務さんの件が終われば?」

 ホントに諦めの悪いヤツ…

「うん、でも常務がお戻りになったら、わたしは寝ちゃいますよ、今朝は早かったし、それに明日もあるから…」

「あ、そうかぁ…
 うーん…
 あっ、でも、まだ直ぐには常務が戻るかはわからないしぃ…」

 ホントに諦めの悪い…

「じゃ、ギリギリまで頑張りますよ」

 ホントに諦めの悪いヤツ…

 だけど不快では無い…
 いや、今夜の一人待ちぼうけのこの時間には最高に楽しいといえるかもしれない。



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