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シャイニーストッキング
第5章 黒いストッキングの女4     部長大原浩一
 23 律子 ⑫

 私は銀座の女ですから…

 マンションを出てタクシーを拾いシートに座ると、先程の律子のその言葉が脳裏に蘇ってきた。

 どういう意味なんだろうか…
 銀座の女なんだから、夜の女なんだから、男の影や存在があって当たり前ということなのか、だがそんな事は私だって普通に理解できている。
 何かもっと深い意味があるはずなのだ。

 そもそも一揃いあった男モノの服は多分、パパ、いや、スポンサーの男のモノなんだろう、それにあの豪華な億ション、間違いなく相当な経済力のある存在がいるのはわかるのだ、そして朝刊を取っていた、それはそのスポンサーが頻繁に通っているという意味なのではないのだろうか。
 だがそれならば、今回の私の存在の意味はなんなのだろうと疑問が浮かぶ、朝刊が要る程に頻繁に通っているのならば今日の、いや、これからの私はリスキーな存在になってしまうはずなのだ。
 あの夜の銀座の豪華なお歴々の客層を比べたら、私などは全然、まだまだ若造であり、まるで足元にも及ばないはずである、一時の火遊び的であってもやはり私ではリスキーなはずなのだ。
 
 そして出掛けに彼女は、また必ず来訪してほしい、という意味の言葉をくれた。
 それはスポンサーは滅多には来ないということなのだろうか。

 私だったらあれほどに金を掛けていたら頻繁に通うと思うのだが…
 全く見当もつかなかった。
 そして昨夜、イク寸前に『あなた』と私の事を呼んだ、それも妙に心に引っ掛かる。

 私は銀座の女ですから…

 どうやらその言葉には沢山の深い意味が含まれているようであった。
 
 そして山崎専務だ…
 絶対に私をハメたに違いないのだ。
 確かに昨夜は男冥利に尽きるといえた思いの夜ではあったのだが、間違いなく専務の仕業のはずである。
 とりあえず今日中に一度専務とは話さねばならない。

 でも、銀座の女か…
 確かにいい女だ、ゆかりとは正反対のいい女である。
 また胸がザワザワと騒めき始めていた。
 そして目を閉じる、と、不意にゆかりの顔が浮かんでくる。

 本当にとんでもなく鋭い勘だ…
 さっきの電話での会話を思い浮かべ、更に胸のザワザワが増してくる。

 ゆかりを裏切ってしまった、でも、昨夜は正に古えからのことわざである
『据え膳食わぬは男の恥』的な展開ではあったのだから仕方ない…
 


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