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シャイニーストッキング
第5章 黒いストッキングの女4     部長大原浩一
 24 秘書役のゆかり

 ゆかりを裏切ってしまった、でも、昨夜は正に『据え膳食わぬは男の恥』的な展開ではあったのだ、仕方ない…
 私はそんな自分に必死に言い訳をしていたのだ。

 ブー、ブー、ブー…
 携帯電話が着信した。
 山崎専務からである。

 「おはよう、昨夜はどうだった…」

 やっぱり山崎専務の仕掛けであったのか…

 「おはようございます、やはり専務の仕掛けなんですね」
 「え、何のことだい」
 「とぼけないでくださいよ、もう…」
 「いやいや、そんなに怒るなよ」
  専務は含み笑いをしている、間違いない、確信犯である。

 「でも、あれは…」
 「まあ大原くん、とりあえず今夜も時間くれないか、夜は空いてるんだろう、それとも今夜も…」
 それとも今夜も律子に逢うのか…
 と、いう意味なのだろうが私は専務の続きの言葉を遮った。
 「大丈夫です……」
 そして時間と場所を聞き、電話を切る。

 やはり専務のたくらみか…
 ただ、それ程はイライラはしなかった、その点では我ながら情けない思いではあったのだ、だが、とりあえず今夜ちゃんと説明してもらおう。

 まさか深い意味はないよな、軽いよな…
 
 そして一応秘書役のゆかりに今日の予定だけでも再確認しておこうと電話をする。

 「部長どうかしましたか」
 「いやごめん、……こういう訳で夜に急きょ予定が入ってしまったんだが、一応秘書のきみに確認取ろうと思ってさ…」
 専務との理由は勿論内緒である。

 「あら…そうなんですか」
 声が嬉しそうに弾んだ。
 
 やはりゆかりは少し変わったな、前はこんな反応しなかったはずだ…

 「…昨日の段階では今夜は予定ないですね、ただ…」

 ただ、何だろう…

 「今日の12時から14時まで空いてますが…」

 あ、そういうことか…

 「そうか、では課長とランチ会議の予定入れといてくれるかな」
 「え…、はい、大丈夫です」
 明るい、嬉しそうな声である。

 「場所等は課長に任せるから…」
 「はい、じゃ課長から追って連絡させます」
 あくまで秘書役であった。
 なんとなくその声でゆかりの嬉しそうな顔が浮かんでくる。
 
 やっぱりなんか可愛くなったなぁ…

 私はそう思いながらタクシーの後部座席から、真夏の暑い青色を眺めていく。

 今日も暑くなりそうだ…





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