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シャイニーストッキング
第19章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一
 163 甘い…

「えっ?」
 その私の心から震える昂ぶりを感じなから見つめていると…
 律子はそんな不思議そうな声を漏らしてくる。

「あ、いや…」
 さすがにこの想い、思いは言葉には出せない。

 すると…
「わ、わたしはね、このアナタの甘い香りが大好きなの」
 と、うっとりと甘えた目で私を見つめ返しながらそう、いつもの心が震えてしまう律子特有の声音で囁いてくる。

 そう、そうだ、私はこの律子の声、声音にも初めて会った夜から、なぜか心を震わせ、昂ぶる感情を抱いてもいたのだった…

「あ、甘いって…オジさんの加齢臭じゃないのか?」
 と、私はこの自分の『甘い』と云われる体臭の話題が苦手でもあるのだ。

 なぜか、自分の体臭、汗の匂いを昔からこうした『甘い』と称される事が多いのは分かっているのだが…
 自分的には決して『甘く』は感じずに、ただの汗臭さにしか感じない。

「そんなぁ、加齢臭だなんてぇ…
 違うんですよ、本当に甘く、甘い香りがするんですよ」

「まさか…」

「本当ですってばぁ」

 確かに過去の女達の数人も…
 遡れば、きよっぺやノン、そしてゆかりもそう云っていた記憶があった。

「だ、だけど、体臭が甘いって…」

「ううん、本当に甘いんですよ、甘いの…
 だからわたしはアナタの事が好きな理由のひとつの意味もあるんだから…」
 と、律子は真剣な目でそう言ってくる。

「えっ?」

「はい、そうですよ」
 と、今度は穏やかな笑みを浮かべて囁いた。

「そ、そうか、そうなんだ?」

「はい、そうですよ、この甘い香りを感じなかったら…」
 そして少し、僅かに間を開けて…
「好きにはならなかったかも…」
 そうも言ってきた。

「えっ、そ、そうなの?」

「はい…うん、そうですからね」
 と、今度は満面の笑みを浮かべてそう呟き、そして…
「愛してます…」
 そう囁きながら唇を寄せてくる。

「り、律子…」
 そんな彼女に心は激しく震え、昂ぶり、私自身も強く抱き締めながらその律子の唇を嬉々として吸っていく。

 甘い…

 その律子の唇も激しく甘かった…

『甘い…
 それは愛の、愛情表現の深さのひとつのバロメーターなのかもしれないな?』
 私はそう思いながらも律子の唇を吸い、優しく抱き締め…
 幸せな想い、思いに浸りながら、再び眠りについていく。




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