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シャイニーストッキング
第5章 黒いストッキングの女4     部長大原浩一
 29 山崎専務

 「そうか、営業部も人事部も荒れたか…」
 夜、山崎専務と赤坂のホテルの会員制のバーラウンジで待ち合わせした。

 「はい、大分荒れましたね…」 
 「まあ、仕方ないか」
 「確かに仕方はないんですが…」
 私はじっくりと表情チェックをした話しをする。

 「なるほど」
 「でも、そんな気概のあった輩はその越前屋という彼女と、あと2、3人程度で…」
 少しガッカリしてしまった、と話したのだ。

 「そうか、だが、その彼女はなかなか面白そうだな」
 「はい、そうなんですよそして…」
 私は彼女から聞いた旧態依然とした内情の話しをする。

 「……ということで、落ち着いたら色々と内部改革をしたいなと…」
 そして続けてそう意見を述べた。

 「そうだな、ちょっともう今の時代ではあり得ないな…」
 そして専務はヘネシーの水割りを飲みながら話し始めてきたのだ。
 今回の破綻劇のきっかけは常務派の無理な年金運用問題が発端らしく、バブル崩壊により一気に傾いたそうである。
 そしてその件で吸収合併したら本社が内部調査をする予定であるのだが、内部告発者の情報によるとその常務派がかなりの使途不明金を出しているそうなのだ。

 「どっちみち落ち着いたらまずは粛清人事からするとうちの松本副社長が言ってたからその常務派は処分されてしまうはずだ、だから大原くんはその内部改革を大胆にしてもかまわないぞ」
 松本副社長とはこの山崎専務派閥の事実上の後ろ盾であるのだ、そして現在本社ではこの松本副社長が実権を握っていると言っても過言ではない存在なのである。
 つまり私は自動的に、この本社の主流派閥である松本副社長派閥ということになっていたのだ。

 「そうなんですか、じゃあその準備もしないと…」
 「うむ、それにこれからの時代は女性を蔑ろにしては通用しないからな…」
 「はい、そうですね」
 私はそう返事をし、意味ありげな顔を山崎専務に向ける。

 「ところで専務…昨夜のこと、ちゃんと説明してくださいよ…」
 「ああ、まあ、いや、その、あれだ…」
 専務が急に歯切れが悪くなった。

 「でもよかったんだろう」
 「それはまた別ですよ…」
 山崎専務は観念した顔をする。
 そして口を開いた。

 「実は、あれは、ママからの…」

 クラブのママから頼まれたそうなのだ…
 




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