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シャイニーストッキング
第5章 黒いストッキングの女4     部長大原浩一
 30 律子の話し

 へーラーのママから頼まれたと言うのだ…

 実は律子は少し前まで某財閥系企業の何番目かの息子と大恋愛をして、そして無理矢理別れさせられ、その男は政略結婚をしたのだという。
 だがお互いの想いは断ち切れずに愛人でもよいと密かに続けていたのだが、とうとうその妻に存在がバレてしまい、再び無理矢理別れさせられてしまったそうだ。
 そしてその代わりにと相当額の手切れ金とあのマンションを貰ったそうである。
 そして紆余曲折あって2年程前にママと知り合い、現在に至っているそうなのだ。

「へぇそうなんですか、でもその話しと私に何の関係があるんですか」
「まあ、最後まで聞けよ…」

 ママの元で働くようになって心もようやく落ち着き、律子自身もなんとかこれから先を見れるようになった約半年前、偶然なのか、故意なのか、その財閥系のお坊ちゃまがへーラーに来店したそうなのだ。
 そして当たり前のように男は復縁を迫ってきた、但し、復縁といってもまた愛人として…

 だが律子は馬鹿ではない、既に想いは明日に向かっていたから当然断ったのだが、男はしつこくてなかなか諦めない、それが悪循環となり、律子自身は完全に男に対しての想いが断ち切れたそうだ。
 またストーカーという程でもないのだが、男は未だに律子の周りにたまに現れたりすることがあり、とうとうママに相談してきたそうなのである。

「そこでだな誰かいい男でもいれば、ということでさりげなくママが聞いたら…」
 「聞いたら…」
 「そうだよ大原くん、君がいいって彼女が言ったんだとさ」
 そこで山崎専務がひと肌脱いで昨夜の仕掛けをしたそうなのだ。

 「そうなんですか…」
 「そうだよ、大原くん、男冥利に尽きるじゃないか、それに君はバツイチ独身だろう」
 「はぁ、まあそうですけど…」
 確かに嬉しい話しではあった。

 「で、酒に何か…」
 「あ、それはスマン、本当に悪かった」
 軽い睡眠誘発剤を入れたそうだ。

 「でも悪い話しじゃないだろう、私からしたら羨ましいぞ」
 「ええ、まぁ…」
 確かにそれ程に悪い話しではないのだが、内容が内容だけに複雑な想いが湧いてきていた。

 なぜ私なのだろうか…

 律子の顔が、そしてあの殺風景な部屋の様子が浮かんでくる。

 あの殺風景の意味が何となくわかったような気がしていた…





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