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シャイニーストッキング
第5章 黒いストッキングの女4     部長大原浩一
 31 前途多難な予感

 あの律子の生活の匂いが全くしない部屋の殺風景な意味が、何となくわかったような気がしたのだ。

 また胸がザワザワと騒めいてきていた…

 「なあ、律子はなかなかいい女じゃないか」
 「はあ、まあ…」
 「なんだ、昨夜、楽しんだんだろう」
 「いえ、朝まで寝てしまいました」
 なぜか昨夜のことは専務には言いたくはなかったのだ。

 「ええっ、そうなのか、それは勿体ない」
 「まぁ…」
 「じゃあ、また今夜でも行ってみたらいい」
 「いえ、それは…」
 なんとなく、憂鬱になってきていた。
 とりあえず律子の話しはもう専務とするのは十分だった、いや、やはりこの話しは聞かなければ良かったと思っていた。

 決して軽いとはいえないな、重い話しだよなぁ…

 ザワザワと胸が騒めき、憂鬱のモヤモヤが脳裏を覆ってきていたのだ。
 
 吸収合併の発表会見まであと1週間を切った今、これからも更に仕事は山積みであり、私には大変なプレッシャーがのしかかってきていた。
 そしてプライベートではゆかりというかけがえのない女性が存在していて、更に、新たに律子という女性が現れてしまったのだ。
 またいくら行き掛かりとはいえ私は既に律子とも寝てしまっていた、それに今夜、彼女の過去の話しを聞いてしまったのだ、これからの私には彼女の事を無視する事なんて決してできないだろう。
 なんとなくだがこの先の私には、公私共々に前途多難な荒波が見えてきたような気がしてならなかったのである。


 そしてなんとか再び仕事の話しに、話題を戻したのだ。
 「じゃあ、新規事業計画はどんどん進めていって、更に子会社化にするに至っての内部改革の準備、そして人事も大原くんに一任するから積極的にどんどん決めていってくれたまえ」
 「はい、わかりました」
 「俺は大原くんがやり易いように色々と裏を固めていくから…」
 それは大変ありがたかった。
 そして発表会見の1日前には人事異動の辞令が出る事の確認をして、午後10時に専務と別れたのだ。
 ここのところ色々あり過ぎて毎晩遅くなっていたから、既に私には睡魔が迫ってきていた。

 とりあえず早く寝たい、そして色々考えるのは明日にしよう…

 私はタクシーを拾い、帰途に向かったのだ。

 もう心も、頭も、体力も、限界ぎりぎりであった…






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