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シャイニーストッキング
第5章 黒いストッキングの女4     部長大原浩一
 32 7月31日木曜日午前7時

 ブー、ブー、ブー…

 枕元に置いてある携帯電話が着信した。
 3日連チャンの朝の着信である。

 「越前屋です、おはようございます、朝早くからすいません…」
 昨日の彼女のクリクリとした大きな二重の目が浮かんできた。

 「午後からコールセンター部関係との会議ですよね…」
 彼女には関係各部署との会議等には全て秘書役として同行を頼んでいたのだ。

 「その前に大原本部長さんに会って頂きたい人がいるんですけど」
 「うむ、いいけど…」
 そういうことで今日の午前11時に面談という形式で会う約束をした。

 「あ、ありがとうございます…」
 彼女は喜んで電話を切る。
 昨日彼女と話した時にたまたま私がふと
 似たような立場の人はまだまだいるのか…
 と、聞いたのだ、多分この言葉の反応なのだろうが、やる気のある気概の持ち主はどんどん大歓迎なのである。
 なにせ、これからやろうとしている改革は新しい試みなのである、沢山の人材が必要なのだ。

 まだまだ人材が足らないと思うの…
 ふと、そう言っていたゆかりが浮かんできた。

 あ、そうだ、一応今日の午前中の予定を聞いてみるか…
 本音は声を聞きたくなったのである、それに昨日のランチでのアヒルキャラのネクタイと微妙な香水の残り香の事も少し気になっていたからだ。

 「あら、おはようございます、どうしたんですか」
 「いや、ゆかりの声が聞きたくなって…」
 「ええっ、なにを朝から言ってんです」
 急に嬉しそうな声のトーンに変わった。

 やはり、ゆかりはだんだん変わってきている、なんとなく柔らかくなってきたな…
 そう実感する。

 「いや………そういう訳で今日の午前中の予定を一応確認したくてさ」
 「ふぅん、そうですか」
 そう間をとり
 「大丈夫ですよ、私も部長の予定は今日までしか把握してませんけど午前中は無いですね…」
 ただその越前屋さん面白そうですね、と付け加えてきた。

 「そうか、わかったありがとう、声が聞けて嬉しかったよ」
 「え、何そんな朝からぁ」
 本当に嬉しそうな声である。

 私もまだまだこんな歯が浮くようなこと言えるんだ…
 少し照れくさくなっていた。

 「今日はネクタイちゃんと選んでくださいね…」

 だが最後にしっかりと釘を刺されてしまったのだ…

 


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