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シャイニーストッキング
第5章 黒いストッキングの女4     部長大原浩一
 34 前途多難の匂い
 
 私は午後、コールセンター部関係と会議をした。

 ここのコールセンター部はほぼ100%に近くクレーム処理専門らしい、たが今後の新規事業計画の主力は勿論このコールセンター中心になる予定なのである。
 そこで会議では現段階で伝えられる範囲の概略だけを説明したのだが、クレーム処理オンリーしか実績のないこの部署にとっては全くの寝耳に水の内容であった。
 やはりゆかりの云っていた通り、根本的に新たに作り上げていかなくてはならないのだと強く実感させられてしまう。
 ただ、クレーム処理も確実に必要であり、この部署はそういった意味では問題なく存続することは間違いなかったのだ。
  そして肝心要のこのコールセンター部には、期待を持てるような人材はこの時点では見当たらなかった。

 早々と前途多難の匂いがプンプンしてきていた…



 「今日ね、あの例の黒い彼女の蒼井美冴さんと面談予定だったんだけど……」
 なんと彼女は体調不良で突然休んだのだ、と電話で言ってきたのだ。

 「面談が嫌だったんじゃないのか」 
 「それは違うの、まだ彼女には面談予定を伝えていなかったから…」
 今までも一切当日欠勤はなく、初めての事で、本当に体調不良らしい。
 ただ連日のこの暑さにより、我がコールセンター部では彼女を入れて3人目の体調不良による欠勤者でシフトが埋められなくなり、ゆかり自身も深夜までオペレーターとして対応しなくちゃならなくなったそうである。

 「それは大変だなぁ、だが、オペレーターできるのか」
 「バカにしないでくださいよ、オペレーター対応マニュアル作ったのはこのわたしなんですからね」
 「あ、そうだった…」
 「そうですから、この、わ、た、し、ですから」
 このピンチに少しゆかりのテンションが昂ぶっていた。

 「だから今夜は行けないです……ね」
 急に声のトーンを下げる。

 「そうか、それは残念だ…」
 「えーっ、全然残念に聞こえませんけど」
 そうなのである、本当は全然残念ではなかったのだ、本音をいうと少しホッとしていたのだ。
 なぜなら黒い彼女が原因の夜のゆかりは激しい、いや、少し激し過ぎるのだ。
 いくら覚悟はしていても今夜を入れると3連チャンになってしまうのである、私にはさすがに少しきついのである。

 贅沢な悩みだとは思うのだが…




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