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シャイニーストッキング
第5章 黒いストッキングの女4     部長大原浩一
 36 東京タワーの真下で

 私達は美味しい中華コースを堪能していた。

 「そのぉ、やはり越前屋さんはやはり出身は新潟なのかな…」
 「もぉ、この苗字のせいでみんなそう言うんですよねぇ」
 そう口を尖らせて言ってきた。
 彼女は笑顔のかわいい、おしゃべりで愉快な女の子であった。

 「私は生まれも育ちも東京の下町の亀戸辺りです」
 「そうなんだ、すまん」
 「いいです、だってもう小学生時代から言われ続けていますから」
 笑いながらそう言っていた。

 「ただ、曾祖父の時代に秋田県から東京に来たそうです…」
 なんでも越前屋という苗字のルーツは秋田県らしいそうだ。

 身長は155㎝位だろうか、童顔の丸顔で、笑顔のかわいい、明るく聡明な女の子である、これからが楽しくなりそうだ、と思っていた。

 「ごちそうさまでした、また明日です」
 「うん、明日は…」
 「午前中が総務部で、確か午後はまだ未定になってました」
 「あ、そうか、明日もよろしく」
 「はい、失礼します、あ、そう、ダックの件、絶対誰にも言いませんから…」
 彼女はそう言って小走りに帰っていった。
 結局はアヒルキャラは否定できなかった。

 ダックか…
 
 私は歩きながら目の前にそびえ立つライトアップされた東京タワーを見上げ、アヒルキャラの顔を思い浮かべていた。

 確かセーラー服着ていたよなぁ…

 彼女とゆかりの組み合わせは面白そうだな、水と油のようだが最近のゆかりをみると案外いいコンビになるかもしれない。
 私は東京タワーの真下でそんなことを考えていた。
 夜なのに湿気が高く、汗ばんでしまうくらいであった。

 タクシーを拾おうか…

 
 ブー、ブー、ブー、ブー…
 すると、携帯電話が着信した。

 あ…
 電話は律子からであった、私は無意識に腕時計を確認する。
 午後10時になるところであった。

 店からなのか、とりあえず無視はできないな…

 「もしもし…」
 「あ、私です、律子です…」
 「昨日はありがとう」
 「いいえ、そんなこと…こちらこそ…」
 やはり律子の声にはなぜか心が震えるのだ。

 「あ、今夜は店じゃないのかな」
 「はい、今夜はお休みなんです…」
 日、月、木曜日の週3日休みなのだそうだ。

 「今、帝国劇場で観劇してきまして…」
 
 胸がザワザワしてきた…



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