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シャイニーストッキング
第5章 黒いストッキングの女4     部長大原浩一
 43 噂

 午前中は総務部での会議であった。
 今朝の越前屋朋美からの情報通り吸収合併の完全子会社化の噂は既に浸透しているらしく、そのことに対しては昨日までのような動揺は見られなかった。
 そして私がリストラ対象をリストアップしているという噂も本当に拡散しているらしく、私のことを直視してくるような者もいなかったのだ。

 「本当に本部長が今朝言った意味がよぉくわかりました」
 社員食堂でランチを共にしている越前屋朋美が食べながらそう言ってきた。

 「そうだろう」
 「はい、だって今だって、皆わたし達を避けている位ですからね」
 そう苦笑いをする。
 なぜならこの社員食堂でも私達のテーブルの周りだけ席が空いているのだ。
 
 「本当に情けないです…」
 彼女にとっては仮にも自分の会社なのである、そう思うのも仕方がないとは思う。
 ただ一つだけ気づいた事があった、それは今まで完全に旧態依然とした男性中心の体制だったせいの反動なのか、どの部署でも女性達の目力の方が強く、輝いて見えるのである。
 それは多分今まで虐げられてきていた女性社員達の殆どが、この私の目の前に居る越前屋と同じような思いや希望を持ち始めているのではないのか、と、私には感じ取れたのだ。

 きっとこれからこの会社は変わるんじゃないか…
 そう思っている目に見えたのである。

 「あ、午後からの会議はシステム情報部になったそうです」
 電話を受けながら彼女はそう云ってきた。

 システム情報部…
 それはこれからの改革案に於けるコールセンター部署と同様に、かなりの中心的な役割を担う部署といえた。
 どっちにしろ、合併後はこのコールセンター部とシステム情報部を早急に改革し、再構築しなくてはならないのである。

 なんとか頼りになる人材が居てくれればよいのだが…

 するとゆかりからの着信がきたのだ。

 「あ、わたしです」
 「うん、どうした…」
 「明日も朝イチで会議が入っちゃって…」
 実は忙しいのは今回の吸収合併による新規事業計画だけではなかったのだ、この計画をついこの前まで知らなかったうちの営業課が頑張って新規の仕事を取ってきてしまったのである。
 現在のコールセンター部では、損保系、流通系、通販系の3つの部署のオペレーター業務を請け負っているのだが、その他に業務が増える事になったのだ。
 

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