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シャイニーストッキング
第20章 もつれるストッキング4       律子とゆかり
 187 本当のわたし
 
 それに今まで、必死に自分自身に厳しく律していた規律を破ってしまった…
 今日佐々木ゆかりが帰った直後に突然沸き起こった対峙の動揺の嫉妬心による衝動からのセックスとそれにより感じた激しい罪悪感。
 
 そしてそのセックスにより強く感じた禁断的な快感と絶頂感が心の奥深くにしっかりと扉を閉め、隠していた筈の淫乱で淫靡な強い性欲をも目覚めさせてしまった…
 これが更に覚醒への扉を開くきっかけともなったのであろうと思われる。

 また、今夜のこの田中課長との初めての経験といえる同僚、上司との食事でのたわいもない女子トーク的な軽やかさからの心の高ぶりと昂ぶりによる刺激によって、この瞬間に、完全に、さっきまでナニかが、と恐れ、怖がっていた不惑な存在、つまり、もう一人のわたしではなく…
 それは本当のわたし自身という存在感が覚醒し、心の扉をゆっくりと開いてきたのを自覚したのである。
 
 そう、本当のわたしなのだ…

「そうラッキーなんですぅ、本当に彼、あ、大原常務は素敵だなぁってわたしもホントにそう思ってます」

 わたしはそんな言葉が自分の口から出た事に違和感を…
 いや、違和感ではなく、そんな本当の自分が顕れ、露れ、現れた思いを自覚した。

 いいや、今までのわたしという存在がニセの、偽りの存在といえるのだ…

「あらぁ、じゃぁ、松下さんと私との、どっちが大原常務を落とせるのかの競争になっちゃうわねぇ」
 と、そんなわたしの本当の自分自身という存在感の覚醒を実感してしまい、心を激しく波立たせ、騒めかせている複雑な心境等々、想像もできないであろう田中課長は、穏やかで、軽やかで、にこやかな、そして、ややほろ酔い気分の浮かれた想いのままにそう言ってきたのである。

「そうですねぇ、それじゃぁ、競争ですねぇ…
 あ、でもぉ、わたしのが有利かなぁ?」

「えぇ、そうよねぇ、なんていったって松下さんは常務専属秘書な訳であるしぃ、それにぃ…」
 彼女はそう言いながら視線をわたしの上から下までチラ見をし…
「その若さと、美しさと、その脚線美にはかなわないかもぉ」
 と、囁く。

「そうかもですねぇ…」
 そしてわたしは、その言葉がスッと出た事に内心驚いてしまう…

 いや、これが本当のわたしなんだ…

 この自信と自己顕示欲…

 これが本当のわたし…
 

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