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シャイニーストッキング
第20章 もつれるストッキング4       律子とゆかり
 190 帰りのタクシー(2)

 その美冴さんの言葉のウラには…
『本当にオトコって、ストッキングフェチのオトコって、ストッキング脚が魅惑的だと見境ないんだから...』
 的な、わたしの想いと同じ様な呆れ気味な意味を含んでいると感じられた。

「ふぅぅ、本当ですよねぇ…」
 美冴さんのそんなウラの想いを汲み取りながらもわたしの心は、更に深い焦燥感、ううん、失望感を…
 いいや、絶望感を感じてしまっていた。

 その絶望感…
 それはつまりは…彼との関係が終わりを、いや、彼とあの松下秘書から一方的に終わりを告げられた感覚。

 彼、大原浩一というオトコを盗られ、獲られてしまったかもしれない…
 いや、間違いなく獲られてしまったという絶望的な感覚。

「それにしても、あの松下秘書の美しさは想像の遥か上だったわ…」
 美冴さんは、そんなわたしの絶望感を察知したのであろう、そして慰めの意味もあるのだろう……
 そう、小さな声音で囁いてきたのだ。

 想像の遥か上…
 それは松下秘書を見るまでのわたしと美冴さんの彼女に対する情報量は、越前屋さんから聞いていた僅かな情報しかなかったから。

『いい匂いがしてぇ、あ、あっちん(伊藤敦子)に雰囲気が少し似ていてぇ…』
 それが越前屋さんからの唯一の情報。

 その情報に加えて、これは美冴さんも知らない、いや、わたししか知らない、松下秘書の本社に於けるある意味都市伝説的にまこと密やかに噂されていた…
『ニューヨーク支社からの緊急異動の…
 もしかしたら山崎専務の秘密のナニかの関係者…』
 という不思議で不惑さいっぱいの噂、ウワサ的な情報。

 そしてその情報プラスの…
 わたしに激しい動揺をうんだ『シャネル』の香りとそのカラクリの信憑性。

『ものすごくぅ、オシャレでいい匂いがするんですぅ…』
 そう越前屋さんが伝えてきていたあやふやなフレグランスの情報が、ここ数週間のわたしの心の奥深くに、シコリの様に騒めいていた想いと合致をし…
 だがその合致はあり得る筈がないくらいの荒唐無稽な想像でしかない筈の筋書きであり、カラクリなのではあるのだが…
 そこに本社で噂されている都市伝説のもう一人の登場人物である『山崎専務』というピースを組み込ませると...
 ピタリと合致してしまう事にも気付いてしまう想いからのもうひとつの絶望感。



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