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シャイニーストッキング
第20章 もつれるストッキング4       律子とゆかり
 191  帰りのタクシー(3)

 越前屋さん曰くの『…ものすごくぅいい匂いが…』と、リアルなシャネルの香りと以前の残り香というパズルの様なかなり荒唐無稽な疑惑と疑問と猜疑心…
 この『山崎専務』というピースにより、ピタリと合致してしまい、絶望感が生まれてしまっていた。

 それにこの『山崎専務』というキャラクターならば、いや、彼を本部長から執行役員、そして挙げ句には常務という地位までをもトントン拍子に、いいや、外部からみたならば瞬く間のあり得ないスピードでの出世を実現させてしまうチカラを顧みれば…
 わたしの心に蠢く、荒唐無稽な想像は簡単にあり得る事実の様に思えてしまうのである。
 
 そしてそれは、このわたしの地位、ポジション、出世も然りといえ、いや、このイチ派遣社員から正社員登用され、僅か一週間で『新プロジェクト』での部署の主任に抜擢された蒼井美冴さんの存在も然りであり…
 それは、正に、荒唐無稽ではなくて、現実的にあり得るという事実といえるのだ。

 だからこそ、今、この心で蠢いている騒めきが…
 疑問、疑惑、焦燥感、失望感、猜疑心、荒唐無稽な想い等々の全てが、この『山崎専務』というキャラクターのピースにより、リアルな現実となって一気にわたしの心を絶望感というマイナス要素な思考でいっぱいに埋めつくしてきていたのである。

 そしてその絶望感の意味する最大のリアルなことは…
 彼、大原浩一との関係の終わり。

 完全にあの松下秘書に盗られ、獲られてしまった…
 わたしは美冴さんとのそんな僅かな会話と、目での声なき想いを交わし、そんな事実の絶望感に一気に心打ちひしがれてしまったのだ。

 すると、そんなわたしの絶望感が伝わったであろう美冴さんは…
 優しく手を握り、自らの脚を、ストッキング脚をわたしの脚にスッと寄せ、絡み、密着させてきて、美冴さんからの優しい慈しみの想いを伝えてくれてきた。

 それは自らをストッキングラブと自称する美冴さんならではの慈しみと優しさの想いからであり…
 先に禁断なビアンの夜を過ごし、友情を越えた想いのシンパシーからならではともいえる。

「もぉオトコって生き物はねぇ…」
 そして、前の座席にいる越前屋さんに聞こえない様な小さな声音で耳元にそう囁いてきた。




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