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シャイニーストッキング
第5章 黒いストッキングの女4     部長大原浩一
 48 カウンターの女性

 落ち着きのあるよい店であった。
 
 多分マンションからは徒歩で15~20分位か、殆ど歩かないから気付かなかったなぁ…
 そう思いながら店内を眺めていると、店の奥の角の飾り棚が目に入ってきたのだ。
 その角には
『沢村悠司、追悼コーナー』
 と、小さく名称が貼ってある。

 「ん、沢村…ゆうじ…ああ、知っている」
 そう思わず呟いた。

 「あれっ、お客さんゆうじさんの事を知ってるんスか」
 「あ、知ってるとは言っても名前だけだよ、こう見えても一応、大学時代はサーフィン学連に所属していたから…」
 少し照れながらそう言った。

 「確か学生時代に一度だけ鴨川の海で見かけた記憶があるなぁ…」
 「そうなんスか、実はこの店はこのゆうじさんの元居た店なんスよ」
 「え、もしかして…彼は亡くなったのか…」
 「はい…あの阪神淡路大震災で…」
 
 そうなのか、あれは悲惨な大災害だった…

 そして私は立ち上がり、そのコーナーに歩み寄り、そこにある品々を眺めていく。
 そこには彼の追悼特集の雑誌、追悼DVD、サーフボード、Tシャツ、そして女性とのツーショットの写真等々が展示されていた。

 あれっ、この写真、この彼とのツーショットで写っている女性は何処かで…
 何処かで見たことがあるような気がしたのだが、他人のそら似であろうと思い、その時はあまり深くは考えなかったのだ。

 そうか、亡くなったのか、人の運命なんていつ何が起こるこわからないもんだよなぁ…
 そうしみじみと思いながら戻ろうとカウンターを振り返る。

 ん…
 するとカウンターの右端に座っている女性が私を見ていたのだ、そしてその女性と目が合った。

 「あっ…」
 なぜか急に、いつもとは違った意味での胸のザワザワが騒めき始めてきたのだ。

 「き、キミは…」

 「こんばんは…」

 初めて声を聞いたかもしれない。
 その声はややハスキーな、しっとり感のある声であった。

 黒い彼女だ…
 カウンターに座っていたのだ。

 「え、あ、何で…」
 私は余りにも予想外の事で動揺をしてしまっていた、まさか、彼女とこんな場所で出会うとは夢にも思わなかったからである。
 そしてそこにいる彼女は、いつものように上から下まで真っ黒であった。

 間違いない、黒い彼女、蒼井美冴がここにいる…



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