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シャイニーストッキング
第5章 黒いストッキングの女4     部長大原浩一
 50 おぼろげな瞳

 私は改めて蒼井美冴を見る。
 結婚直面の彼が大震災で突然に亡くなったのだ、そして今日お墓参りをしてきた、だから喪服のような黒い服。

 ん、黒い服、いつも黒い服、黒い彼女…

 「そうか…」
 「え、何か」
 「あ、いや、こっちの話しで…」
 そうか、だから彼女はいつも黒い服なのか、そうなのだ、彼女は毎日、日々、喪に服しているから黒い服なのだ、そういう意味だったのか…
 私はそう想いを巡らしながら彼女を改めて見直していく。

 黒いワンピースに、黒い艶やかないつもの美しい黒いストッキング脚…
 そういうことだったのだ。

 すると彼女は私のそんな想いを見透かしたかのように呟いた。
 「そうなんです…」
 私はそう呟く彼女の目を見て胸がドキドキと昂ぶってしまうのだ。

 おぼろげな目だ…
 そう、ゆかりが言っていたあのおぼろげな瞳、今彼女はその瞳を私に向けてきている。
 その瞳は確かに私の心の想いを見透かしてきたのだ。
 そして私はその瞳に心も吸い込まれてしまうような感じもしていた。

 「…だから黒い服なんだ」
 素直に言葉に表した。
 「はい、そうでした…でも…」
 「でも…」
 「今夜で終わりにしようかな…」
 彼女はそう呟き、遠くを見るような目をした。
 それはまるで目の前に亡くなった彼がいて、会話をしているかのように私には感じられたのだ。

 なんだろう、この不思議な感じは…

 私はなぜか彼女のそんな言葉や声に、そしてその仕草に心が震えてしまっていた、いや、魅了されていたのかもしれない。
 そして今度は胸のドキドキが、またザワザワへと変わってきていたのだ。

 なんかゆかりが色々と影響を受けていたのがわかるような気がする、なんなんだろう、この彼女の不思議な魅力は…
 私の心はすっかりと彼女の魅力に魅了され、惹き込まれていったのである。

 そしていつの間にか店内にはお客が増えて、先ほどまでのオーナーはその応対に忙しくなり、カウンターは私と彼女の二人になっていたのだ。
 そして私はそんな心の内を落ち着かせようと煙草を取り出した。

 「あ、部長さん、私にも1本くださる…」
 そう彼女は言ってきたのだ。
 カチャッ、シュボッ…
 私はジッポーライターで火を点ける。

 すると彼女は煙草を吸うのではなくふかし、灰皿に置いたのだ…



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