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シャイニーストッキング
第21章 もつれるストッキング5   美冴
 20 いいわけ…

「えっ……
 あ、あ、蒼井…くん……か?……」

 だが、大原常務は…
 この不意な声掛けに驚きはしたのだが…
 いや、もしかしたらわたしがここに居ることを、予想していたのかもしれない。

「ずいぶんと、大きなため息ね…
 こんばんは…………大原常務さん………」

 わざと少し嫌みに、少し意地悪気味に、続けたのだが…
 そして一応、そんな驚きの声を漏らしはしたのだが…
 このわたしを見る、彼の、大原常務の目からは、それほどの驚きの色が見えなかったからだ。

「あ、あ、蒼井くん、い、いや、そ、それは、そのぉ、な、み、美冴くん…」
 そしてそれよりも、わたしのこの嫌みな意味の方に反応しているようであった。

 そう、この嫌みと意地悪気味の意味、正体は…
 そもそもが、今日の常務室での対峙の時の、あの疑惑を…
 いや、松下秘書との疑いようのない不貞の露わと顕れの動揺と、その慌てぶり。

 そして、それが…
 今夜のわたしの『ひがみ』という、自分自身の心の小ささと穢れを、嫌が応もなく自覚し、卑下してしまう、心の波紋のきっかけとなったから。

 そう、そもそもが…

「まったく………」
 あなたのせいなのよ……
 と、わたしはその想いを目に込め、彼を見つめた。

「あ……い、いや…………」
 そんな、その想いは通じたようだ…が…

『え、そうなの…』
 
 もしかしたら、それを伝えたくて…
 いや、わたしに言い訳したくて…
 わざわざここに、この店『波道』に来たのか?

『なぜここに?』
 わたしはそう思い…見つめる。

「あ…たまに…い、いや、あれから何回か…通ってるんだよ」
 なぜか、そんな言葉に出さないわたしの想いが通じるみたいで、必死に話してくる。

 あれから…
 それは、わたしが『黒い女』から覚醒したきっかけの夜…
 多分、それは、不思議な導きによる偶然の逢瀬…

 そう、おそらくゆうじの残穢の導き…

「少し時間が空いたり、小腹が空いた時にさ…
 うん、たまにね、な、何回か…さ…」

 わたしは、そんな彼の言い訳気味な話しを軽く聞き流し…

「ふーん………」
 肘を付き、横目で彼を見る…

 ゆうじと同じ銘柄のタバコの煙がゆっくりと揺らぎながら漂い…
 その匂い、いや、香りが鼻孔を刺激し…

 ゆうじが…

 そこに居る...
 


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