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シャイニーストッキング
第21章 もつれるストッキング5   美冴
 57 自虐の想い

「え………あ、あ、い、いや……」
 私は焦燥感に陥り、胸が激しく脈打ち…
 脳裏に、この美冴を含めての三人の存在感が一気に心に浮かび上がってしまった。
 
 ゆかり…
 美冴…
 律子…
 この三人の存在感が、いや、浮かび上がったのは三人への罪悪感かもしれない…
 そして心が現実に戻されてしまった。

 美冴の不思議な因果の流れの導きにより…
 大原浩一として…
 自分として…
 オトコとして…
 責任と覚悟を決め、開き直ったのはずなのに…
 ゆかりと律子を脳裏の隅に追いやり、蓋を閉めたはずだったのに…

『ほら………あのオンナの…
 シャネルの香りがするでしょう………』
 美冴の意地悪なそんなひとことで、いとも簡単に心が揺らぎ、リアルな現実に戻されてしまったのである…
 それは三人に対する、己の優柔不断さからの罪悪感。

 野心、野望という、とうの昔に消したはずの想いが、律子という血脈の存在により心を揺らがせ、また再び心に火が点き、燻り始め、律子と共に進む…
 と、ようやく覚悟を決めたつもりであった。

 だが私は…
 目の前にぶら下がるエサに、いや、この美冴という魅惑の存在に、いとも簡単に食い付き、そして釣られてしまい、優柔不断さに揺らぎ、罪悪感に揺らぎ、こうして自虐の想いに陥ってしまったのだ。
 そしてあれほどに高まっていた熱い衝動や、フェチへの昂ぶりが、今、醒めつつあった。

 だが、美冴はこんな私の自虐の想いをとおに解っているかのような、いや、私の心の想いなんて既に見透かしているかのような目でジィっと見つめ、自らのその艶やかな唇を私の鼻先に擦る様に押し付けながら…

「ふぅぅ………」
 と、そんな私の自虐な想いを包み込むような甘い吐息を吐き掛けてきて…
「あのオンナの香りを消してあげる……」
 と囁き、キスをしてきたのだ。

『あのオンナの香り…』
 それは私の中の律子という残滓の想いの存在感。
『消してあげる…』
 それはゆかりへの罪悪感を消すということ。

 そんな美冴の全てを見透かしたかのような言葉とそのキスは、この自虐な想いを吸い取り、打ち消すみたいに…
「あ…うぅ…」
 唇を吸い、舌先を絡め…
「これが…わたしの味と香りね…」
 と、甘い唾液を流し込み。
 そして舌先を吸い…
「あぁ、アナタの味………ね…」
 



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