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シャイニーストッキング
第5章 黒いストッキングの女4     部長大原浩一
 54 熱い夜 ③

 「あれっ、お客さん、ゆうじさんの事を知ってるんスか」
 「うん、名前だけだよ……こう見えても大学時代は……4年間サーフィンしていたからね…」
 部長は懐かしそうにそう話す。

 えっ、部長がサーフィンを…

 「確か学生時代に一度だけ鴨川の海で見かけた記憶があるなぁ…」
 「…実はこの店はゆうじさんが元居た店なんスよ…」
 「え、もしかして……」
 「はい…あの阪神淡路大震災で…」
 その事実に驚いた表情をした、そしてスッと立ち上り店の奥のゆうじの追悼コーナーに歩いていき、そこに展示してある品々をしばらく眺め、カウンターを振り返ったのだ。
 するとわたしと部長の目が合った。

 「あっ…、き、キミは…」
 驚いた表情をする。

 「こんばんは…」
 わたしは精一杯に心の動揺を隠して挨拶した。

 「な、なんで…」
 逆に部長はかなり動揺している。

 「こんばんは、大原部長さん」
 「あ、蒼井美冴さんでしたよね」
 「うふ、嬉しい、わたしの名前を知って頂いてるなんて…」
 「い、いや、勿論ですよ」
 「そう、黒い女です…」
 多分、鉄の女、佐々木ゆかり課長、つまり部長の恋人から何度もわたしの話しを聞いているのであろう、だからわたしの名前をスッと言えたのだ、本来なら部長がイチ派遣社員の名前を知っている訳がないのだ。
 そして勿論わたしは、黒い女、なのである。

 「そ、そんな黒い女なんて…」
 「大丈夫ですよ、そう呼ばれているのは知ってますから、それにいつもこんな服ですからねぇ」
 
 へぇ、部長の声って意外に高いんだ…
 実際今までわたし達はまともに会話をを交わした事がなかったのである、それどころかまともに声を聴いた事もなかったのだ。

 「あれっ、確か、体調不良とか」
 「あら、ちゃんと知ってくださっているなんて嬉しいかも…」
 体調不良を知っているという事は、ゆかり課長とはマメに連絡は取り合っている証拠である。

 そして…
 昨日は出勤途中の電車の中で急に体調不良になってしまったのだが、今日は治ってお墓参りをしてきたのだ、と、わたしは語った。

 「え、お墓参り…って、あっ」
 ようやく、あのツーショットの写真のわたしに気付いたようであったのだ。

 ゴルフ焼けした部長の顔からは、未だに動揺の色が消えてはいなかった…







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