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シャイニーストッキング
第5章 黒いストッキングの女4     部長大原浩一
 56 熱い夜 ⑤

 このいやらしいフェチの目は昔のゆうじと同じ、脚フェチ、ストッキングフェチの目なのである。

 わたしの胸の騒めきが、急にザワザワからドキドキに変わってきた。
 そしてなぜか、微妙に疼きも感じ始めてきたのである。

 まただ、昨日の電車の中と同じようになってきた…
 今までの全ての欲望を無理矢理抑制していた反動なのだろうか、昨日の電車内で若い男がわたしの黒いストッキング脚を見つめてきた時に湧き出してきた欲情の疼きと同じなのだ。
 そして部長もそんなわたしの欲情に気付いたようであった、急になんとなくソワソワとしてきたのである。
 すると部長は煙草を取り出し、ジッポーライターで火を点け、吸い出した。

 あっゆうじの煙草と同じ銘柄だ、そして同じような懐かしいジッポーライターの金属音とベンジンオイルの匂いだ…

「あ、部長さん、わたしにも1本くださる…」
 わたしは煙草は吸わない、ただ、違う意味で煙草が欲しかったのだ。

 カチャッ、シュボッ…
 ジッポーライターで部長が火を点けてくれ、そして吸い込まずにふかし、灰皿に煙草を置いた。
 煙草の煙が立ち上っていく。
 わたしはそのゆらゆらと紫色の煙草の煙が揺れながら立ち上っていく様子を見つめていき、ある想いを馳せていくのであった。

 同じ銘柄の煙草
 同じジッポーライター
 同じ脚フェチ、ストッキングフェチ
 同じ目尻の笑い皺…
 ゆうじと部長の共通点である。
 わたしは揺れながら立ち上る煙草の煙の向こうに、なぜかゆうじの存在を感じていた。
 そしてその存在に、わたしは語りかけていく。

 そうなの?もういいの?
 これは、彼は、部長は、ゆうじの導きなの?…
 でないと今日のこのタイミングの出会いが偶然だとは信じられないのである。
 ゆうじの導き以外にこんな偶然が起こるはずがないのだ…
 と、わたしは思ったのだ。

 そうなの、もういいの、彼でいいのね…
 わたしは必死に煙の向こうの存在に語りかける。
 すると、突然、ズキンッ、と子宮が疼く、そしてそれと同時にわたしに欲情のスイッチが入ったのだ。

 わたしは欲情の想いに思考を支配され、部長を見つめ、そしてカウンターの下で自らの脚先、つまりはヒールの爪先で、部長の足元の脛の辺りを擦っていくのである。

 もう欲情の昂ぶりは収まらない…
 
 




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