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シャイニーストッキング
第22章 ほつれるストッキング 1        佐々木ゆかり
 38 香りの違い…

 そういうことなのか――

 わたしが見ていた限りでは、ゆかりさんの変化、狼狽えは…
 松下秘書が、彼の後ろから、この宴会場に入ってきた瞬間から始まった。

 つまり、それは…

 昨日のとは違う、この松下秘書のシャネルの香りを察知したから――

 昨日は、No.19…
 今日は、No.18…

 その違いは――

「………」

「………」

 わたしと松下秘書は、お互いに、逸れずに見つめ合う…

「………」

 だけど、一瞬、松下秘書の唇に、笑みが?

「………」

 え…
 多分その笑みは、わたしの僅かな、鼻先の動きを認めたから?

 つまり、それは、やはり…
 この、シャネルの香りの違いなのか――

「………」

 そして、振り返り、ゆかりさんを見る。

「………」
 小さく、頷く。

 そういうことか…
 やはり、このシャネルの香りの違いに、なにかの秘密があるのか――

「………」

 そういえば…

 昔…

 このシャネルNo.18を…

 彼から、感じた記憶が――

 どこだ?

 いつだ?……


「さあぁ、お姉さぁん……
 あ、松下さぁん、どうぞぉぉ……」

 突然…

 わたしの思考を…

 いや、ゆかりさん、松下秘書、わたしの三人の…

 ううん、彼もだ…

 四人の、緊張感の張り詰めた…

 見えない、絡まった、透明の空気の糸を…

「あぁ、蒼井さんもぉ……」

 明るい、お酒の入った、より明るい越前屋さんの声が…
 割り込み、プツンと、断ち切ってきたのだ。

「さぁ、まずは、松下さぁんどうぞぉぉ」
 ビール瓶を片手に、松下秘書へと傾けていく。

「…はぁ……」
 わたしの、緊張の糸は一気に緩み、いや、切れてしまった。

「ふぅぅ…」

 すると、どうやらゆかりさんも、少し、立ち直ったみたい…

 いいも悪いも、やっぱり、越前屋さんに救われたようであった――

 だから、わたしも、この空気感を変える意味で…

「ほらぁ、越前屋さん違うでしょう…」

「え…」

「まずは、大原常務さんからおつぎしないとぉ…」

「え、あっ」
 その瞬間、越前屋さんは、面白い様に、緊張で固まってしまう。

 一瞬にして、この場が、僅かに緩む――
 
 だけど…

 シャネルの香りは、まだ、消えてはいない。
 

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