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シャイニーストッキング
第22章 ほつれるストッキング 1        佐々木ゆかり
 114 合鍵…

「じゃ、帰る…ね」
 身支度を整え立ち上がり、そう告げた。

「あ、うん」
 浩一さんもベッドサイドテーブルに缶ビールを置き、立ち上がってきたのだが…

「いいわ大丈夫よ…」
 わたしは彼の肩に手を置き、制する。

「い、いや、だって…」
 目が揺らぎ、そう呟く…
 その目には、様々な色が浮かんでいた。

「大丈夫だから、明日早いんだから」

「でも…さ…」
 
「大丈夫、ほら合鍵持ってるし、閉じていくからさぁ」
 そう囁き、ジッと見つめる。

「う、うん、そうか…」

「うん…」
 一瞬、見つめ合い…

「………」

「………」
 どちらからともつかずに、顔を寄せ…

「おやすみなさい」

「あぁ、うん…」
 唇を、合わせていくーー

「……あ…」
 わたしから、スッと離れ…

「明日、夜、電話するね…」

「あ、うん…」
 これは、無意識からの言葉…

「………」

「あ、いや、一段落したら、オレから電話するよ」
 離れ際に、指先を絡め、そう云ってきた。

「え、あ…う、うん…」
 その言葉は、嬉しかった。

 そう、素直に嬉しかったーー

「うん、電話するから…」
 今度は浩一さんが、逸らずに見つめ、そう云ってきた。

「……うん、待って…る……ね…」
 わたしはそう応え、サッと踵を返し…

「おやすみなさい…」
 寝室を出る。

 バタン…

「……すみ…」
 ドアの閉まる音の後ろで、声が聞こえた。

 そしてわたしは、リビングを通り過ぎ…
 ヒールを履き…

 バタンーー
 玄関のドアを閉め…

 ガチャ…
 持っている合鍵で、鍵を閉めた。

「………」

 そして、抜いた合鍵を見つめるーー

「………」
 ようやく涼しくなった夜風が、スーっと頬を撫でてくる。

 まだ…

「………」
 わたしは、手に掴む合鍵を見つめ…

「………」

 まだ彼を、失くしたくは、無いーー

「………」

 わたしはその合鍵をバッグにしまい、後ろを向くーー

「………」

 玄関前のエントランスから、夜空を見上げると…

「あ…」

 まるで、今のわたしみたい…
 思わずその月を見て、そう、自虐してしまう。

 満月を過ぎ、静かに欠け始めた月が、夜空を淡く照らしていたーー
 
第22章 ほつれるストッキング 1佐々木ゆかり

         完


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