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シャイニーストッキング
第23章 ほつれるストッキング2       蒼井美冴と松下律子
 3 蒼井美冴(2)

 心の奥底で、秘かに蠢く暗い翳の想い…

 それはまだ、自分でもよく分かってはいない、ただ、それは、昨夜からずうっと、心の奥底で、何かが蠢き続けているのだ。

 ただ、まだ、その正体は分からない――

「じゃ、そういう事で、この後よろしくね」
 わたしはそう言って、ゆかりさんの席へと向かう。

 そして…
「ねぇ、健太さん」
「はい…」
 彼を呼び…

「ねぇ、後でちゃんと訳を話すからさぁ…
 わたしと松下さんは二次会には行かないからね…」

「え、あ、は、はい」
 健太はバカではない…
 すかさず何かを察してくれ、そう頷いてくれる。

「あとね…
 ゆかりさんもね、こっそり消えるからね」

「え……あ、は、はぁ…」
 それには戸惑いの色を浮かべたのだが…
 敢えて理由を訊かずに…

「だから、健太さんに、上手くまとめてほしいのよ」

「あ…は、はい……わ、わかりました……」
 この時点では、健太に訳など想像もできないであろうが…
 すかさずわたしの目を見て察し、頷いてくれた。

「ありがとう…後で連絡するからね、よろしくお願いね…」

「はい、了解です」

 そして、わたしは、目配せでゆかりさんを呼び…

「ゆかりさんはこの後、シラッと消えて…」

「え?」

「うん、彼の処に行って……」

「え、彼の処って?」

「あ、それは…ゆかりさんに任せるけどね…」

「え…あ、う、うん…」

 わたしは、敢えて、全部を話さなかった…

「任せるわ……」
 そう…
 敢えて、中途半端に告げたのだ。

 だって、この後の事は…
 二人だけの問題であるから。

 それに、この意味が分からなければ、それはそれで、わたしには構わない事だから――

「……あ、うん…ありがとう……」
 だけど、ゆかりさんは分かったのか…
 そう、言ってきた。

「うん、好きに…して……」

 それでもわたしは、全部を告げられなかった…
 いや、それは、わたしの中の…
 蠢く暗い翳が、言わせないようにしているのかもしれない。

「…………」
 
「…………」

 わたしとゆかりさんは、見つめ合う――

「ではぁ、宴もたけなわですがぁ、そろそろお時間となりましたぁ…」

 そしてその健太の声は…
 わたしと松下律子秘書の、長い夜の始まりの合図でもあった。


 
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