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シャイニーストッキング
第23章 ほつれるストッキング2       蒼井美冴と松下律子
 4 蒼井美冴(3)

「じゃ、はい、二次会に行く皆さんは、このタクシーに乗ってくださぁい」
 と、武石健太と、越前屋さんの二人が、お店の出口前で声を掛けている間をぬって…

「さぁ、こっちへ…」
 他のメンバー達がガヤガヤとしている隙に、わたしは彼女、松下秘書の手を引き、お店の裏通りへと導いていく…
 そしてすかさずタクシーを停め、乗り込んだ。

「運転手さん、三軒茶屋方面ね…」
 そう告げ、二人で後部座席に並んで座る。

「ふぅ…上手く抜け出せたわね」
 わたしは、思わず独り言を漏らす。

「え…は、はい」
 だが、その独り言は、そのまま彼女に伝わり、そう応えてきた。

「あ、あら、ヤダ、独り言のつもりだったのにぃ…」
 声が大きく、彼女に丸聞こえであったのだ。

「あ、そうだったんですかぁ」
 だけど、どうやらこのやり取りが、わたしと彼女の間の緊張感を緩めるきっかけとなったようで…
 お互いの空気感が和んだみたい。

「…ほら、二人で抜け出すとさぁ、色々と訊かれたりで面倒だしね」

「あ、はい、そうですよね…」

 うん、彼女の緊張も少し緩んだみたい…
 いつもの凛とした佇まいがやわらぎ、さっきまで健太たちと笑っていた時の、年相応の表情がふっと戻ってきた。

「そういえばさぁ、松下さんて幾つなの?」
 そう、つい、無意識に訊いてしまう。

「え、あ、はい、28歳です」

「そ、そう28歳なんだぁ…」
 わたしは、ちょっと声を揺らがす。

「え、やっぱり老けて見えますか?」
 
「あ、いや…なんか、ほら、昨日、初めて常務室で見かけた時に、あまりにもビシッとしてたからぁ、もう少し上に見えたの…」

「あ、は、はい…あれは…」
 すると彼女は…
「ワザと意識してるんです…」
 と、下を向き、そう言ってきた。

「え、ワザと?」

「は、はい、いちおう常務秘書なんでぇ、ちゃんとしないと…ってぇ…」

「あら、まぁ、そうよねぇ」
 その言葉で、彼女に対するイメージが変わった、いや、やっぱり普通のオンナのコなんだなぁって、思い直したのである。

「なんか、恥ずかしい…」

「あ…ごめんなさい…
 なんか、ちゃんとしてるんだなぁって…」

「いや全然ですよ、ただ必死に周りに対して仮面を被っているだけですよ…」
 
 二人の間に張っていた糸が、ふっと緩んだみたいーー


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