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シャイニーストッキング
第23章 ほつれるストッキング2       蒼井美冴と松下律子
 5 松下律子(2)

「あ…ごめんなさい…
 なんか、ちゃんとしてるんだなぁって…」
 という、美冴さんの言葉にわたしは…

「いや全然ですよ、ただ必死に周りに対して仮面を被っているだけですよ…」
 思わず、そう応える…
 だけどそれは、取り繕いようのないわたしの本音だった。
 
 え、なんで?…
 さっきまで張りつめていたはずの空気が、いつの間にか少しやわらいでいる、そのことに気づいた途端、胸の奥がまた騒ついた。

 どうしてわたしは、それを美冴さんに口にしてしまったのだろう?…
 
 そして、ふと…
『わたしね、本当にね、松下さんと話してみたいなぁってさぁ…』

『あ…は、はい、わ、わたしもです』

『あら、そう、ならよかったわ…
 じゃぁさぁ、この後、付き合ってね…』
 との、さっきの会話が甦ってきた。

「じゃぁさぁ、わたしには仮面外してくれるのかしら?」

「……えっ」
 不意にそう囁きながら、美冴さんの顔が近付き、覗いてきた。

「だってぇ、その笑顔がさぁ」

「え……」

「ううん、ほら、さっきの健太達との笑顔がさぁ、本当の松下さんの顔なんでしょう?」

「え、あ、いや…」
 わたしは、さっき、そんなに緩んでいたのか?…と、少し動揺してしまう。

「ほら、それに、今もさぁ…」

「え?」

「昨日までの、ううん、さっきまでの仮面の顔じゃないわよ」

「……」
 わたしは、この美冴さんの言葉にすっかり翻弄されてしまっていた…
 いや、美冴さんに惹き込まれてしまっているみたい。

「ね、今夜は、色々とお話ししましょうよぉ…」

「………」
 そして、美冴さんの不思議な魅力にも、呑まれてもいた。

 それにもうひとつ…
 さっき、タクシーに乗るなり聞こえた
『運転手さん、三軒茶屋方面へ』
 その言葉にも、少し心が緩んでいたのだ。

 だってそれは、彼、大原浩一常務のプライベートを感じさせる場所…
 あの時、彼がチラと云った
『偶然部下がいてさ…』
 それがやっぱり美冴さんだって分かったから。

「ね、松下さん、いいでしょう?」
「あ、は、はい」

 そして…
『わたしもね…』
 あの含みを帯びた声音の意味が、今なら少しだけ分かる気がした。

 わたしだけじゃない、美冴さんもまた何かを隠している…
 そう思った瞬間、仮面の糸が緩んだ気がしたーー
 

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