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シャイニーストッキング
第23章 ほつれるストッキング2       蒼井美冴と松下律子
 10 蒼井美冴(6)

 カラン…
 アイビーの蔦の絡まるドアを開けると、ドアベルの鈴の音が静かに鳴った。

「さぁ…」
 わたしは、松下さんを導き、入る。

「いらっしゃいませ…あ、美冴さん…」
 すると、昨夜は居なかったオーナーのノリくんが、いつもの様に明るく迎えてくれた。

「こんばんは…」
 わたしがそう、ノリくんに声を掛けると…

「こんばんは…」
 後ろから、松下さんも声を掛ける。

「あ、秘書さんも…」
 するとノリくんは、すかさず松下さんの姿を確認し、そう応え、そして、慌てて…
「あっ…」
 と、声を揺るがし、目を行き来させた。

「………」
 わたしは、そのノリくんの様子に、一瞬にして、彼、大原常務からの口止めが、容易に想像できたのだが…

「うん、いいのよ、今夜は、美人秘書さんも連れてきたからね」
 と、さりげなくウインクをし…
 ノリくんに対して、問題ない、という想いを伝えたのだ。

「あ、は、はい、い、いや…」
 どうやらノリくんには、そんなわたしの機転の反応が伝わった様ではあったのだが、少し、動揺を露にしてくる。

「あ、そんな、美人秘書だなんて…」
 そして、ノリくんの動揺に気づいた松下さんも、フォローのつもりであろう…
 そう、わたしに続いてきた。

「は、はい、あ、ぶ、部長さんは?」
 そんなフォローにノリくんも気付き、気を利かせたつもりでそう応え…

「え、あ、もう大原さんは、常務サマなのよ」
 そうわたしも返し…

「あ、そ、そうだった、常務さんになったって…」
 と、わたしを見てから、松下さんへと目を泳がす。

 こんな僅かな遣り取りからも、松下さんはサッと機転が効き、そこからも、彼女の聡明さが感じられる…
 わたしは、ますます興味が沸いてくる。

「もう彼は、常務サマに出世したんだからぁ、部長だなんて言ったら怒られちゃうからねぇ」

「あっ、そ、そうっスよね」

「うん…」
 そしてノリくんはわたしの昨夜の来店を知っているだろうから…
 そうさりげない会話で流し、わたしは、視線をカウンターの右端へと向ける。

「さ、さぁ、いつもの席、空いてるっスから」
 その視線に吊られる様に、ノリくんは、いつものわたしの席を、指差してきた。

 なんとなく…
 松下さんに、昨夜の彼との遭遇を悟られたくはなかったからーー

 
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