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シャイニーストッキング
第23章 ほつれるストッキング2       蒼井美冴と松下律子
 16 蒼井美冴(9)

「うん、ええ、二年…」
 そう…
 あの二年間は長かったーー

 ゴクリ…
 わたしはカクテルを、一口飲む。

「あ、でも…二年……かかるかも……」
 すると松下さんは、わたしを静かな目で見つめ返し、そう、ボソっと呟いた。

「………」
 そんな松下さんの目には、慈愛の色が浮かんでいる…
 そう、それは慈愛ーー
 決して同情の類いではなく、わたしを想ってくれる、慈しみの色。

「え、あ、ごめんなさい、わ、わたしは…
 あ、わたしはそんな経験はない…あ…」
 すると、こんな、わたしの見つめ返す目に、慌ててそう応えてきたのだが…

「……」

「あ、でも…わたしも、大好きな父をあの震災で亡くして……るの……」

「え、そう…」
 わたしには、そう応えてきた松下さんの、この、慈愛の色に…
 なんとなく合点がいった。

 大切な…
 最愛な…
 そんな人を、同じ震災で亡くしているーー

 そして、その意外な共通点に…
 なんとなく彼女のこの目に、シンパシーを感じてもいた。

 シンパシー…
 それは、このいいようのない、突然の、自然による大震災という被害…
 人災による事故等ではない、避けられない被害に…
 誰に怒りをぶつけられるものではない、自然の猛威の被害という共通点。

「………」
 だからなのか?
 わたしは、一昨日、初めて松下さんを見た時に、彼女に対して、拒絶感や、その若さ、美しさに対しての嫉妬心は沸かなかった。

 逆に…
 この魅惑さだったら、彼、大原常務が虜になっても仕方ないのか…
 と、さえ、冷静に思えていた。

 だけど、それは…
 わたしの立場からしたら、ゆかりさんとは違い、彼を間に挟んだ嫉妬心とは無縁な位置にいるからなのだと、なんとなく思っていたのだが…
 それは違ったのだ。

 シンパシー…
 つまり、同じ匂い、類いのナニかを、わたしは松下さんから嗅ぎとったからなのかもしれない。

 そして、わたしの確信である…
『ストッキングラブ』であろうという、思いも然り。
 
 だからこそ…
 ゆかりさんに対するような『ヒガミ』という嫉妬心の捻れた、醜い想いが沸いてはこないのだろうーー

「え、お父様を……」
 わたしはそんな想いを巡らせながら、また再び、松下さんの膝に…
 つまりは、ストッキング脚に、手を重ねていく。


 
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