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シャイニーストッキング
第23章 ほつれるストッキング2       蒼井美冴と松下律子
 33 蒼井美冴(17)

 略奪欲…
 それはわたしも何度か抱いた、禁忌の欲望、そして心を激しく狂わせる思い。
 わたしは一瞬、松下さんの翳を垣間見た感じがしたーー

「だからぁ、来るべき佐々木ゆかりとの秘書としての対峙の時に、彼女を一撃するつもりでぇ、そのお盆休みのあの人との逢瀬から、シャネルNo.19に変えたんです…」

「あっ」

「元々、佐々木ゆかりに強くわたしという存在感をアピールするつもりで、No.18の残り香という罠を仕掛けてはいたから…」

「っ…」
 その時、わたしの脳裏には閃きがあった。
 それは…
 わたしも確かに、彼、大原浩一から何度か、シャネルの微かな残り香を嗅ぎとった事が過ったから。

 それが、松下さんの残り香だったんだ…

「……」
 そして松下さんは、そんなわたしの閃きを敏感に感じ取ったのだろうか…
 ジッとわたしの目の動きを見つめ…

「そういえば、わたしもあの人からは、何度か、ムスクの微かな残り香を感じた事があるの…」
 そう、呟いてきた。

「え?」
 ムスクの残り香、それは間違いなくわたしの香り。

「うん、あれはムスクだったわぁ…
 あのディオールの柑橘系ではなかった…」
 柑橘系…それは、ゆかりさんの香り。

「え、あ…」

「そうなんだぁ、あの人は、あの頃は…」

 そう彼、大原浩一は…
 ゆかりさんだけではなく、わたしと松下さんの三人を……
 と、わたしは言いかけたのだが、その言葉は呑み込んだ。

 だって、それは、話しを余計に反らしてしまうからーー

「…あ、だ、だから、ゆかりさんは、あの対峙の時に、あんなに揺らいだんだ?」
 わたしは話しを戻す意味で、そう呟く。

「え、あ、は、はい、そうみたいですね…」
 と、松下さんは、目の奥を光らせ、そう頷いた。

「そういう意味では、さすがでしたよ…」
 そして、そう続けてきた。

「さすが?」

「はい、彼女の聡明さが仇になったっていう
か、それが故に香りの裏のウラの意味まで理解してくれて…」

「あ、そうか」
 わたしも、その松下さんの曰くの意味を理解し、少し、怖くなった。

「鈍いオンナだったら気付かないだろうけれど…」

 そう、ゆかりさんら、理知的て聡明なオンナであるから、それが故に仇となってしまった…

「だからこその準備室室長なんでしょうけどね…」

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