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シャイニーストッキング
第23章 ほつれるストッキング2       蒼井美冴と松下律子
 35 松下律子(17)

「……………」

 わたしは、自分の出自の熱く、重い血脈のお話しまでを一気に話してしまった…
 ううん、話さなくては、いや、きっと、ずっと誰かに話しをしたかったんだ。
 そして、それが今夜の美冴さんであり、また、彼女も聡明さが故に、これが日本経済界を揺るがす様な影響力がある内容であると、理解をし…
「………」
 さっきからずうっと…
 黙って聞いてくれていた、いや、おそらくは、あまりにも突拍子の無く、予想だにしようにも出来ない様な内容であるから、言葉を失っているのだろう…
 美冴さんの表情を見て、そう思えていた。

 ただ、わたしは…
 この心の思いの衝動の強さからなのか…
 そして美冴さんには、内容の重大さからなのだろうか…
 お互いに喉が渇いてしまい、三杯目のカクテルをお代わりし、それを飲む事により、心の冷静さを、かろうじて保てられたのだろうと思われる。

 とにかくわたしは…
 誰かに、この自分自身の血脈の話しをしたかったのだ。

 それは、あの人以外の誰かに…
 そして、それを一気に話せて、わたしの心がすっかり軽くなった。

「……ふぅぅ…」
 そう想いを巡らせていると、ふと、美冴さんはそんな吐息を漏らし…
 ゴクリ…
 と、カクテルを飲み…
 コトン…と、グラスをテーブルに置き、わたしを見つめ…
「……そ、そうなんだぁ………」
 そう、呟いた。

「……」
 わたしは、美冴さんの目を見つめ返しながら、黙って頷いた。

「な、なんだかさぁ…わたしにはさぁ…
 あまりにもリアリティが無さ過ぎてさぁ…」

「……」
 それは、至極最もな答えであろう。

 そもそもが、わたしの祖父、おじいさまの存在自体が、もはや伝説と化してる現代に於いて、いきなりこんなお話しを聞いても理解する事自体が至難であろうから…
 ううん、これは経済界や、経営という分野に興味や野心、もしくは知識として勉強してきた者にしか理解できない範疇の話しであり…

「わたしこれでもいちおう、経済学部卒だから、何とかねぇ…」
 この美冴さんの、吐息混じりの感嘆が、普通の反応であろう。

「…あ、だからかぁ……」
 すると美冴さんは、何かを思い浮かべたかの様に、宙を見つめ、そう、声を上げた。

「だから最近の彼の雰囲気が、変わったんだぁ?」

「え?」
 
 

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