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シャイニーストッキング
第23章 ほつれるストッキング2       蒼井美冴と松下律子
 36 松下律子(18)

「あ、だからかぁ…
 だから最近の彼の雰囲気が、変わったんだぁ?」
 と、美冴さんはわたしを見つめ、そう言ってきた。

「えっ、変わった?」
 わたしは、この美冴さんの言葉にドキっとしてしまう…
 だって、それはーー

「うん、変わったの」

「か、変わったって?」
 心が微かに騒めいてくる。

「……うん、そうか、そうよねぇ…」
 そして美冴さんは、ジッとわたしの目を見つめ、ううん、それはまるでわたしの心の奥深くを覗いてくる様な、目を向けてきて…

「……っ」
 また不意に、わたしの膝に手を置き…

「そうよねぇ、仕方ないかぁ…」
 と、まるで、美冴さん自身に言い含めるかの様な声音で呟き…
「そうよねぇ、こんな素敵なお姫さまを手にいれちゃったんだもんねぇ…
 仕方ないわよねぇ……」
 そう、言ってきたのである。

「え…お姫さまって?」
 実は、それは、云わずもがなであり…
 美冴さんのその言葉の含む意味には、理解できる。

「そうよねぇ、ヤツもオトコって事よねぇ…」

 ヤツ…
 これが、美冴さんの本心からの、あの人の総称であり、存在感なのであろう。

 だが、なぜか、この美冴さんには、不思議と嫉妬心や焦燥感の類いが沸いてはこない…

「…うん、だからかぁ、そうよねぇ」
 と、膝に置かれた美冴さんの掌が熱くなり、もう一口、カクテルをゴクリと飲み…

「そりゃぁ、こんなお姫さまが自分を好いてくれるんだもの、野心が沸いても仕方がないわよねぇ…」

「あ…」
 やはり美冴さんは、聡明であった。

「この前、なんかさぁ、そんな熱をさぁ…
 ヤツ、あ、大原常務サマの目から感じたのよねぇ…」
 美冴さんはあの人を、ヤツ呼ばわりしたのに気づいたのだろう、慌てて、常務サマと言い直し、誤魔化してきた…
 これが、もし、佐々木ゆかりの言葉であったならば、わたしはこんなに冷静にはいられないのだろうが、なぜか、美冴さんの口からならば、穏やかでいられるみたい。

「あ、え…」
 それよりも、すかさず、そんなあの人の心持ちの変化に気付いた美冴さんに、わたしは、感心してしまっていたのだ…

 なぜか、冷静に、いや、しかも…

「常務に昇進したせいなのかなぁって思っていたんだけど…
 松下さんのせいだったのねぇ…」

 しかも、穏やかでいられるのだーー



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