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シャイニーストッキング
第5章 黒いストッキングの女4     部長大原浩一
 87 黒い女の卒業

「このままで終わりは嫌です」
 わたしのその言葉に大原部長の目が反応をする。

「えっ、ああ」
 だがどうやら逡巡しているようだ。

「たまにでいいの、たまにでよいのです、佐々木課長との合間でいいからその時に…」
 わたしはそう目で想いを訴える。
 
「うん、でも…」
 でも…それでよいのか、と、目で訊いてきた。

「はい、いいんです、わたしは後出し…なんだから」
 そうなのである、わたしはジャンケンでいうなら後出しなのだ、ズルの割り込みなのである、ただ、今は、今だけは、まだしばらくは大人しくしているのだ。

「ただ、これからはもう少し近くに居たいかな…」
 これは本音である、そして、これからのわたしの力にもなって欲しいという意味も込めたのである。

「あ、ああ、うん、わかった…」
 部長はそんなわたしの助け舟的な話しで少し気楽になったようであった。
 今すぐにゆかり課長とわたしという究極の選択を、まだしなくてよくなったのである。
 心なしか顔が明るくなったように見てとれた。

「ありがとう…」
 そしてわたしはそう応えたのだ。
 そうなのだ、まだこれから始まったばかりなのである、いや、これからが始まりであるのだ、そう、わたしという存在の新たなる復活なのだ。
 だからこの先の事はまだわからない、ただ、部長にはこれからの力になって欲しいのは間違いないのである。

 時間は既に午前10時になろうとしていた、ホテルのチェックアウトの時間であった。
 
「これからどうするんだ…」
 ホテルの清算を済ませ、部長がそう尋ねてきたのだ。

「うーん、とりあえず、黒い女は卒業なので、変身の為に洋服を買って、美容室にでも行こうかしら…」
 そうなのだ、明るい流行りの服を着て、髪も明るいカラーにしようと思う。

「そうか、黒い女は卒業なんだっけな、じゃあこれからが楽しみだなぁ」
「でも、お忙しいんですよね、なかなか最近は見かけないから…」
「そうなんだよ、あ、美冴くんは新事業の件は知っているんだよな」
 わたしは黙って頷いた。

「黒い女を卒業するんだから、一緒にやらないか」
 それは悪い話しではなかった、ただ、わたしにはまだぼんやりなのだが、新しい道標的な考えはあるのだが、まだ先の話しの事なのだ。
 
 そうか、まずは足元を固めなくては…







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