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シャイニーストッキング
第5章 黒いストッキングの女4     部長大原浩一
 92 律子からの電話

「じゃ、また、明日かな…電話しますね」
 ゆかりはそう言って電話を切った。
 私は彼女の声が聞けて少しホッとする。
 そして間もなく午後3時になるところであった。

 少し腹が減ったな、そういえば昨夜の夜から食べてないんだ…
 しかしこの部屋には飲み物以外に食料等は何もない。
 食事は基本ほぼ外食、掃除、洗濯は週3回の家政婦に頼んであり、このマンションはほぼ寝るだけの存在なのだ。

 仕方ない、コンビニ行くか、それとも外食するか…


 ブー、ブー、ブー、ブー…
 そう悩んでいたら再び携帯が着信する。
 画面表示は
 へーラー 松下律子
 8月2日午後3時05分
 
 シャネルのお姉さんだ…
 急にザワザワと胸が騒めき、悪魔の本性が顔を出してくる。

「もしもし…」
「あ、わたしです、律子です」
 そうだ、彼女は確か木、土、日曜日と銀座のクラブは休みと言っていた。

「ごめんなさい、電話大丈夫ですか…」
 なぜかこの声を聴くと心が震えてしまうのだ。

「うん、大丈夫だよ」
「よかった、お仕事かと…」
 今日は土曜日である、しかも午後だ、多分、律子は誰かと、そう、ゆかり課長と一緒なんじゃないか、と遠回しに云ってきているような気がして胸が少し騒ついた。

「あ、あのぉ…」
 実は、ベイヒルトンホテルのディナー招待券があるから一緒にいかないか…
 とのお誘いの電話であったのだ。
 ちょうど腹が減っているこのタイミングでのディナーの誘いである。

 どうして、皆、こう勘が良いのだろう…

 そしてさっきのゆかりの
 シャネルのお姉さんのお誘い…
  …と、まるで予言ではないのか。

 そして電話越しの律子の声を聴いていると、あの東京タワー前でのスカイラウンジの夜のエレベーターでのキスが、あのマンションでの一夜の情景が、脳裏に蘇り、浮かび上がってくるのだ。

「そのディナー招待券の期限が今日までで…」
 律子もなかなか痛い処を突いてくるのだ。
 すると私の中の悪魔の本性が現れる。

 行けばいいじゃないか、それにこの連チャンだ、さすがに今夜は勃たないだろう、大丈夫だよ、悪ささえしなければ…
 そう悪魔が囁いてくるのだ。

 そうだな、さすがに今夜は勃たないな…

 そして私は午後4時半にタクシーで迎えに行く約束をし、電話を切った。

 





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