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シャイニーストッキング
第5章 黒いストッキングの女4     部長大原浩一
 95 大きなぬいぐるみ

「基本1人の方が気楽でいいんですけど、でもたまには…」
 そう言いながら私を見てくる。

 そして…

「こうして好きな人と来るのにも、憧れてました…」
 そう言われてドキンとしてしまった…

 なぜならそう言ってきた律子の表情が余りにも可愛く、またなんとなく切ない表情を浮かべたからだ。

 今の私は本当にモテ期みたいだ、こんな一回りも若く、可愛く、美しいこの律子の様な女性にまで好きな人と言われてしまっているのだ、これがモテ期でなければどう説明するというのだろうか…
 そうドキドキと騒めいていたのである。

 そして帰り際に一番大きなダックのぬいぐるみをプレゼントしてあげたのだ。

「わあぁ嬉しいです、ホント大原さんみたぁい、これから毎晩一緒に寝ちゃいますねぇ、ありがとうございます…」
 律子はまるで子供のようにはしゃぎ、喜んでくれる、そしてそのぬいぐるみを抱き締めながらタクシーに乗り、帰途へと向かった。

 タクシーは夜のベイエリアをスムーズに走っていく、この海沿いの夜景がまた美しく心が融けていくようであった。
 そして律子は天王洲のエリアに近づくにつれ徐々に言葉少なくなり、テンションも下がっていくようであったのだ。

「そう…あの…クリーニングが出来てます…けど…」
 マンション前まであと5分という辺りで律子は私の手を握り、そうポツリと言ってきたのである。
 私はそう言ってきた律子の切ない顔を見てしまい、とても帰るとはいえなかったのである。
 天使の悲しむ顔は見たくなかったのだ。

「うん…」
「よかった…」
 その私の返事に小さく、そして嬉しそうにそう呟いたのだ、それが、また私の心を震わせてくるのである。
 私達はマンションのエレベーターに乗る、すると律子は、片手で大きなダックのぬいぐるみを抱き締めながらもう片手で私にも抱き付き、そして唇を寄せてくる。
 私にはその唇を拒むことなどとてもできなかった。
 なぜなら私は、律子のホテルのディナー中の艶やかさと、夢の国での可愛いらしさとのギャップの差にすっかり心が魅了されてしまっていたからである。
 また昼間の罪悪感など、どこかに置いてきてしまったようなのであったのだ。

 そうか、夢の国に置き忘れてしまったのだ…

 律子の唇を受け入れながら、私はそう心の中で呟いていたのである。



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