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シャイニーストッキング
第6章 黒いストッキングの女5     課長佐々木ゆかり
 23 スタート

「いやぁよかったっすね、あの外資系派遣会社が応えてくれて…」
 だがそんなわたしの受けたイヤな目付きの事など想像もつかないであろう杉山くんが、ひと安心の顔をしながらそう言ってきた。

「うん、まあ本当に急だし、準備期間も短いからね…」
 そう言うしかなかったのだ。
 まあ、経緯はどうあれ結果オーライの出発である。
 ただ、わたしの心にはあの目付きのイヤな思いが残ってしまっていたのだ。
 今までも散々その手の目のセクハラは受けてきていたし、十分に慣れている筈なのだが、なぜか今回のあの目付きからのイヤな余韻が残っていたのであった。

「次は土曜日ですね」
 各派遣会社は一旦持ち帰り、また明後日の土曜日のこの時間に会議をする予定となったのだ。

「そうね、杉山くんにもこれからは頑張ってもらわないとね」
「はいっ、死ぬ気で頑張って結果残しますから…」
 そう言う彼の顔を見て、
 若いっていいなぁ
 わたしにもあんな時代があったなぁ…
 と、ふと、思っていた。

 とりあえず杉山くんの初めての大きな、そしてわたしと部長にとってはもう一つとなるとても大きなプロジェクトがスタートしたのだ。
 そしてこれからの僅かに短い準備期間でのやらねばならない課題は山積みなのである。
 なぜならば、うちのコールセンターは現在、完全な受け身であるインバウンドのオペレーションであり、今回の企画のアウトバウンドのオペレーションは全くの未経験な白紙状態なのだ。
 だからイチからマニュアルを作っていき、研修やローテーションを組む等の様々な課題が本当に山積みなのであり、正にこれからは確実に猫の手も借りたい状況になるは必至なのであった。

 本当にあと2人、いや、1人でもいいから片腕が欲しいくらいだわ…
 そう思いながら今度は別件の書類チェックをこなしていく。

「佐々木課長っ、大変です」
 そう言って笠原主任がわたしのデスクのもとにきたのは14時を過ぎた頃であった。

「そんな慌ててどうしたんですか…」
「今さっき蒼井さんから電話が来て……」
 通勤途中の電車内で体調不良になってしまって急きょ欠勤になってしまったそうなのだ。

「ええっ」

 何でも、いつもは普通の早番なのだが、先の2人の欠勤のせいで急きょ中番出勤に変わってくれたのだが体調不良に陥ってしまったというのである…




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