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シャイニーストッキング
第6章 黒いストッキングの女5     課長佐々木ゆかり
 39 姫…

 今週末はある意味大切なスタートなのだ、体調をしっかりと整えなくては今後にも影響が出るような気がしていた。
 だから、ここは我慢であったのだ。

「うん、ありがとう」
「じゃ、また電話します」
 そう言って電話を切った。

 少しでも声が聞けてよかった、多分、来週末は逢えるであろう、あ、でも、生理も近いんだっけ…
 だがその時はその時である、とにかく逢いたいという気持ちが今のわたしには大切なのであったのだ。

 これが普通の愛情というのだろう…
 そう思っていたのである。

 大原部長と話せて、ようやく昨夜からの不惑の想いが落ち着いたような気がした。
 そして週末に逢えないという想いにも区切りが付けられたのだ。
 
 これでこれからの会議に集中できる…
 そんな想いを胸に秘め、午後イチからのあのいやらしい目付きの奴に備えるのである。


 ピッタリ午後イチに奴が来た、その点はさすが全国に急展開中の外資系人材派遣会社の営業マンであった。
 そしてこの前と同じ様に初見でいやらしい例の目で、わたしのチェックをしたのである。
 だがわたしは気持ち的にスルーし、気にしない事にしたのだ、まずは何より仕事が最優先であるからだ。
 そして彼は手配可能な、理想的な2名のベテランオペレーターの資料を持ってきたのである。

「この2人はなかなかのキャリアですね…」
 わたしはこの資料を見ながらそう言った。

「1人は元々国営放送で…」
 1人は某国営テレビ局の政治系のアンケート調査の電話オペレーターを5年していたそうであり、もう1人は映画会社のアンケート調査や視聴率調査をしていた、と言ってきたのである。
 そしてやはり彼の目はわたしの脚を見つめてきていた。
 
 「正に今回のうちの企画内容とピッタリですね、さすがですね…」
 昨日持ち帰って、急ぎ全支社に問い合わせを掛けたのだそうだ。

「笠原主任、すいませんこれコピーお願いします」
 資料を手に彼女は会議室を出ていく。
 そしてその少しの間、会議室内で2人切りになった。
 するとすかさず彼が話し掛けてくる。

「佐々木課長って……姫、あのヒメですよね…」

「えっ…」
 その彼のひと言に、わたしの心臓が一瞬、止まった。

「六本木『J』の姫ですよね…」
 サーっと血の気が引く音が聞こえた様な気がしたのだ。
 



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