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シャイニーストッキング
第6章 黒いストッキングの女5     課長佐々木ゆかり
 47 伝線ストッキング

「じゃあ、こうしませんか、俺の口止め料としてくれるって事で…」 
 あまりにも明るく言うので、つい納得しそうになってしまう。

「ください、必ず約束しますから…」
 その時わたしは閃いたのだ。

「解ったわ、約束ね…」
 そう毅然と言って、バッグからあるモノを取り出し、テーブルの上に置く。

「えっ、これは何ですか…」
「レコーダーよ…」
 万が一脅された時の為に録音している、と伝えた。

「ええっ、非道いなぁ」
「だってしょうがないじゃない、突然、こうして昔の話しだ、と言って呼び出すんだもの…」
 わたしは本当に怖かったのだ、と言ったのだ。

「そんな怖がってる感じはしませんでしたけどねぇ」
「それは…そのぉ…」
 頑張って精一杯の虚勢を張ったのだ、と言った。

「そうですか、なんか誤解させてしまって本当にすいませんです…」
 だけど本当に裏はない、誓ってもいいです、と言う。

「それに、まだ録音しているんですよね…」
 この会話が今後の約束の証拠になるじゃないか、と彼は言うのである。
 確かにそれはそうだ、と、わたしもようやく落ち着いてきた。

「じゃあ、わかったわ…仕方ない、ストッキングあげるわよ」
「やったぁ…」
 彼の表情は満面の笑顔になったのだ。

「で、どうすればいいの…」
「じゃ、トイレで脱いできてくださいよ」
「で、脱いできたらどうするのよ」
「それはちゃんとジップロックで密封して大切にコレクションするんですよ」
「で、そんなモノどうやって…」
「えっ、それを聞きますか」
「あっ、いや、いいわ…」
 それは愚問であった、聞かなくてもどう使うのか位はさすがにわかる。
 それに今はその手のモノ、つまりパンティやブラジャー等の下着の他に、歯ブラシ等の日常のモノまで何でも売っている事は以前、週刊誌で読んだ記憶があった。
 
 まったく男って奴は…
 その時、つくづくそう思ったのである。

 早いとこ、片付けちゃおう…
 わたしはトイレで伝線したストッキングを脱ぎ、新しい代えのストッキングを穿いた。

「はい、約束だからね…」
 そう言いながらストッキングを手渡したのだ。

「はい、ありがとうございます、絶対に約束します…」
 満面の笑みを浮かべ、まるで大切な壊れモノでも扱うかのようにコンビニのビニール袋にしまい込んだのだ。


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