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シャイニーストッキング
第6章 黒いストッキングの女5     課長佐々木ゆかり
 48 フラフラ
 
「はい、ありがとうございます、絶対に約束します…」
 満面の笑みを浮かべ、まるで大切な壊れモノでも扱うかのように、わたしの脱ぎたての伝線ストッキングを持参していたコンビニのビニール袋にしまい込んだ。

「ああ、姫の温もりがする」
「変態だねぇ」
 わたしは呆れてそう呟いた。

「そんな事言わないで下さいよ」
「だってぇ…」
 フェチというモノには部長の例もあるからある程度は理解はできるのだが、こうリアルに目の前で見てしまうとさすがに少し引いてしまっていたのだ。
 彼は大切に自分のバッグにしまう、そして急に真面目な顔をした。

「あ、俺の知っている範囲での昔の黒服の仲間の殆どは、逮捕されたか、もう都内には居ませんよ、それに…」
「それに…」
 それに何だろう…

「今後そっち関係で何かあったらすぐ俺に言って下さい」
 そう言いながらわたしを見つめてくる。

「俺が全力で、『姫』を守りますから…」
 そう言ったのだ。

「ありがとう…」
 そう言うしかなかった。
 今後、この先も、そうそうこんな事があっては困るのだ、だが、わざわざ彼を敵にする事もない。

「あ、そうだ、もう『姫』って呼ばないでね」
「はい、すいません、わかりました、あ、そうだ、明日の会議、よろしくお願いします」
 彼はそう言って立ち上がり、先に帰っていったのだ。

 はぁぁ…
 わたしはすっかり疲れてしまった。
 結果的には恐れていた様な事は何も起きなくてとりあえずひと安心ではあるのだが、彼は一応、仕事上の関係各所の1人には違いないのである。

 これからもたまに彼の顔は見る訳なのよねぇ…
 その都度、過去の負の遺産である黒歴史を思い出すのか、と、憂鬱な思いが湧いてきていたのだ。
 そんな事を思いながらわたしは、すっかり氷の溶けたアイスコーヒーを飲み干し、喫茶店を出る。
 時刻は午後6時になろうとしていた。
 相変わらずまだ外は暑い、そして寝不足のせいと、さっきまでの神経的な疲れもあったのだ、少しだけ一瞬、フラフラとしてしまう。
 
 ああ、暑い、もう定時過ぎたから笠原主任は帰ったかなぁ…
 そんな事を考えながら、5分の距離の会社へと歩いていく。

 なんかフラフラするなぁ、生理も近いし少し貧血気味なのかなぁ…
 なぜか大抵生理の4、5日前になると貧血気味になるのである。




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