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シャイニーストッキング
第6章 黒いストッキングの女5     課長佐々木ゆかり
 66 運命

「それに…」
 それに今日、偶然に健太の前に、『六本木クラブJ』の元黒服の遠藤タカシとも図らずも再会してしまったのである。
 もういつまでもしまい込み、蓋をしている時期ではないのかもしれない、と思ったのだ。

「それに…そう、もう避けててもダメなのかもね…」
「そうですよ、あっそうだっ」
「えっ、なに」
「これからは僕を見つめて生きていくってどうですかぁ…」
「はぁ…」
 全く、この調子の良さには思わず力が抜けてしまう。
 だが、その健太の満面の笑みに少し心が惹かれてしまっていた。

「だって、今回のこれってある意味運命を感じませんかぁ…」
「いや、あまり感じないかも…」
「ええっ、そんなぁ、僕は運命を感じて今日、このコールセンター部に顔出しにきたんだけどなぁ…」
 そしたら偶然に『姫』が目の前にいて、そしてエレベーター前で倒れて、僕が抱きかかえながらここに運び、ゆかり先輩が意識を戻して、こうして再会できた。
 これが運命でなくて何なんですか、と、そう熱く言ってきたのである。

「だいたいが…」
 あんなドラッグ系に狂っていたゆかり先輩がこうして立ち直ってウチみたいな一流会社と云われる企業のキャリア課長だなんて、普通に考えてもあり得ない展開なのに、偶然に僕もこの会社に就職して、ゆかり先輩の存在を知り、そしてゆかり先輩に追い着こうと頑張ってきて、そしてようやく辿り着いて、ついに来週末から同じ部署で働くことになったんですよ、これが運命でなくて何なんですか、と、更に熱く語ったのであった。

「うーん、まあ、そういわれれば、少しそう思うかも…」
 まだわたしにとっては黒歴史には違いないのだが、少し楽しい会話となってきていたのだ。

「すいません、ジントニックを下さい…」
 あまりの健太の熱さに喉が渇いてしまった。

「あっ僕もビールお代わりで…」
 2人で目が合い、思わず笑ってしまう。

 確かにこのオリオンとの過去に関しては比較的良い思い出なのかなぁ…
 と少し思ってきてはいたのである。

「運命かぁ…」
 わたしはジントニックを一口飲み、そう呟いた。
 確かにそうなのかもしれない、あの狂ったような大学時代からこうして立ち直る事ができたのも、オーストラリアからの一時逃避によるニュージーランドでの偶然の出会いのお陰なのかもしれないのだ。

 運命か…



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