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シャイニーストッキング
第6章 黒いストッキングの女5     課長佐々木ゆかり
 68 ストーカー

 どっちみちゆかり先輩は卒業したら都内のどこかに就職するだろうから会えなくなることなんてない、と、高をくくっていたのだ。
 そしたら卒業直後に電光石火の早業であっという間に日本から居なくなってしまい、僕は追いかけて必死に探したのだ。
 だが、とうとう巡り合えなかったのである。

「急に心の支え、いや、梁、柱的な、大切な人が居なくなってしまったから…」
 それからしばらくは呆然自失な生活をしていたのだと言う。

「でも、僕、なんか20歳過ぎたら急にモテ始まっちゃってぇ…」
 適当に遊びながら現在に至る、と言ってきた。

「ま、そんなもんでしょう」
 わたしは結局のオチに笑ってしまう。

「でも、オーストラリアでは必死に探したんですよ、まさかニュージーランドに渡ってたとは…」
「ま、色々あってね」
「でも、オーストラリアで再会してたら僕達どうなってたか分かんないですよねぇ…」
「いやいや、それストーカーだから、オーストラリアまで追いかけて来て会ってたらその時点でアウト、もうその後は二度と会わなかったわよ」
「あ、そうか、ストーカーか、確かに…」
 だから会わなくてよかったかも…
 そう笑った。

「やっぱり運命じゃなく感じてきたわ…」
 健太との会話は楽しかった。
 すっかり心は昔に戻りつつあったのだ。

 確かに健太との事に限っては黒歴史じゃないのかもしれない…
 特にあの守ってくれていた話しには少し感動してしまうのだ。

 やはりこれからはこの負の遺産の黒歴史から逃げないで、ちゃんと噛み締め、見つめ直さなくちゃいけないのかもしれない…
 そう考えていた時であった。

 ブー、ブー、ブー…
 健太の携帯が鳴ったのだ。
 
「……………」
 だが健太は出ない。

「出ないの…」
「あ、いや、いいんですよ」
「彼女からじゃないの…」
 そうわたしが言うと、健太の目が一瞬泳いだ。

 彼女なんだ…

「ちょっとトイレ」
 わたしは気を利かしトイレに立った。

 トイレで自分の姿を鏡で確認する。

 さすがに大学時代からは老けたなぁ…
 でも肌艶はドラッグ系を完全に絶ったから、今の方が綺麗なのである。

 運命かぁ…
 健太とは来週末からは新規事業計画で一緒に仕事をしていく事になるのだ。
 






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