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シャイニーストッキング
第6章 黒いストッキングの女5     課長佐々木ゆかり
 69 欲情の昂ぶり

  運命かぁ…
 健太とはこの先新規事業計画で一緒に仕事をしていく事になる。
 そしてこれからも、事ある毎にこの負の遺産の黒歴史と向き合うという可能性も起こり得る。

 果たしてちゃんと向き合っていけるのか…
 周りには絶対に分からないようにしなくてはならない、ましてや大原部長にだけは絶対に過去は、この過去だけは知られたくはない。

 これから先、ちゃんと乗り込えられるのだろうか…

 トイレから戻ると健太は電話で話していた、多分彼女なんだろう、にこやかに笑みを浮かべて話していたのである。
 そしてわたしが席に戻ると慌てて電話を切ったのだ。
 わたしはなぜかその行為に、健太のその笑顔にイラついた。

 えっ、何で、これは…
 胸がザワザワと騒つき始めてきた。

 えっ、嫉妬なの…
 健太の見ず知らずの電話の相手に対して嫉妬したのか。

 まさか、このわたしが嫉妬したのか…
 なぜなんだ、この8年振りの今日の夕方まで存在自体意識した事がなかったこの健太に惹かれているというのか…

 健太に再会したせいであの昔の『姫』という、女王様気質の昂ぶりの想いまでもが蘇ってしまったというのか…

 あり得ない…
 このわたしが嫉妬など、あり得ないのである。
 
 ましてや蒼井美冴以外には嫉妬などするはずがないのだ…
 胸のザワザワが更に昂ぶってきていたのだ。

「ゆかり先輩、どうかしましたか…」
 わたしはこの健太の笑顔を見た瞬間に嫉妬の想いを自覚した。

 ズキ、ズキ、ズキ、ズキ…
 そして、急に欲情の想いが疼き始めてきたのである。

 えっ、な、何で、欲情なの…
 ザワザワがズキズキに変わったのだ。

 そうか、わたしを守るとまで言った健太が、わたしを差し置いて他の女と親しげに話していた事が許せなくなっての、この嫉妬なのだろうか…
 なぜか欲情の疼きが昂ぶり始めていたのだ。

 そしてわたしのこの欲情の想いが目に映り、健太にも伝わったのかもしれなかった。

「ひ、姫、どうかしました?」
 わたしを再び、昔のように『姫』と呼んだのである。
 まずは乗り込えなくちゃならない壁が、今、このわたしの目の前にいるのだ。

 これから先もしばらくは一緒に仕事をし続けていかなくちゃならない、そして乗り込えなくてはいけない壁、負の遺産の黒歴史がここにいるのだ…



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