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シャイニーストッキング
第6章 黒いストッキングの女5     課長佐々木ゆかり
 70 欲情の囁き

 このオリオンこと武石健太とはこれから先暫くは一緒に仕事をし続けていかなくちゃならない存在である。
 そして目の前にいる彼がまずは乗り込える壁であり、負の遺産の黒歴史といえる存在であるのだ。

 一昨夜の焼き鳥屋の充満した煙草の煙から誘引された脳裏に深く刻まれたドラッグ系の記憶が…
 昨夜の淫らな疼きの昂ぶりからの自慰行為が…
 その自慰行為に起因する睡眠不足が…
 この楽しいお酒による心地よい酔いが…
 このビストロ内での僅かに漂う煙草の煙が…
 これら全てが合わさり相乗し、自身の奥深くに封印していた『姫』と崇め持てはやされていた女王様気質が蘇えってきたのだ。
 そして何よりこのオリオンという存在自体が、過去の負の遺産の黒歴史を生き証人として回顧させてくるのである。
 それら全ての相乗効果が誘因となり、この目の前にいるオリオンを独占したいという気持ちの昂ぶりがこの嫉妬心を生み、欲情の疼きをさせていると思われるのだ。

 そしてその欲情の疼きが自身の脳裏に
 このオリオンという存在を乗り越えろ、呑み込め、そうしなければこの先も黒歴史が付いてまわるぞ…
 そう囁いてくるのである。

 オリオンを乗り越える、呑み込む…
 それはこの欲情の疼きの導きに任せるという事なのか。
 嫉妬心による欲情の昂ぶりの激しさはこの前から何度となく蒼井美冴絡みで分かっているし、部長相手に経験済みなのであるのだが、今回の嫉妬心の持つ意味は全く違うのだ。

 部長の場合はおそらく愛情の裏返しなのだ…
 だがこのオリオンの事は愛情という類ではない。
 それはおそらく黒歴史から蘇った女王様気質の独占欲からの嫉妬心なのだと思われるのだ…
 だがしかし、この欲情の想いに任せたままにオリオンとセックスするという事は、部長に対しての浮気行為に値するのではないのだろうか。

 そう浮気だ、いや、裏切りだ…
 しかし欲情の疼きの想いが再び囁いてくる。

 これから先ずっとこのオリオンと共に仕事をし続けていき顔を見る度に、存在を意識する毎に、あの黒歴史を思い出してモヤモヤとしていくのか…

 そして

 これから部長は特に絡んでくるのだぞ…
 その度にオリオンと黒歴史と部長との板挟み状態になって更にモヤモヤ、イライラ、ザワザワと心をずっと騒つかせていくのか…
 そう囁いてくるのだ。



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