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シャイニーストッキング
第6章 黒いストッキングの女5     課長佐々木ゆかり
 71 欲情の疼き

 これから始まる新規事業計画は大原部長が中心なのだ、今まで以上に絡んでくるのだぞ、その度にオリオンと黒歴史と大原部長との板挟み状態になっていき、更にモヤモヤ、イライラ、ザワザワと心をずっと騒つかせていくのか…
 と、欲情の疼きの想いがそう囁いてくるのだ。

 そっちの方が大原部長に対しての裏切りではないのか…
 
「ねえキミ、お金持ってる…」
 そしてわたしは無意識にその言葉が漏れた。
 その言葉はあの健太にとっての初めての夜にわたしが発した言葉なのだ。
 わたしの欲情の疼きの想いが、そう言えと命令をしてきたのである。

 やれ、やるのだ、オリオンとやって彼をもう一度足元にひれ伏せさせるのだ…
 そうすれば負の遺産の黒歴史の中の一つの大きなオモリが取れる筈なのだ。


「ひ、姫……」
 健太は一瞬、戸惑った顔をしてそう呟き、わたしの目を見てきた。

 そして…

「えっ、あ、まあ、カードありますし…」
 すると健太は、その妖艶な光りを放っているであろうわたしの欲情の目に魅せられたかの様に戸惑いながらも、あの夜と同じ言葉を返してきたのである。
 そして健太自身もそんなわたしの雰囲気に全てを察知したような目で、見つめ返してきたのだ。

「じゃあさぁ、ホテル行こう、連れてってよ…」
 わたしは意を決し、再びあの夜と同じくそう続ける。

 これは浮気ではないんだ、明日からの為なのだ、オリオンの存在をわたし自身の中に呑み込む為に必要なことなのだ…
 そう、明日からのわたし自身の為なのだ。

 ズキ、ズキ、ズキ、ズキ…
 欲情の想いが激しく子宮を疼かせてくる。

 わたしはあのオリオンとの夜を、そしてオリオンにとっての初めての体験の夜を再現していくのだ。

「でもダメだよ、ラブホテルじゃ、わかるよね…」
 そうわたしは言い、店を出てタクシーを拾う。

 そしてタクシーに乗り込み
「ハイアットリージェンシーホテルへ…」
 と、運転手にそう告げたのだ。



「ほら、カード出して」
 ホテルに到着し、わたしはチェックインの手続きをし、オリオンにそう言いカードを出させる。
 ここまではあの夜を忠実に再現していた。

 だがわたし達は、タクシーに乗ってからホテルに着くまでの間は無言であったのだ。
 
 わたしはタクシーの中で必死に自問自答していた…
 




 
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