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シャイニーストッキング
第6章 黒いストッキングの女5     課長佐々木ゆかり
 72 サディスティックな衝動

 わたし達はタクシーに乗ってからホテルに着くまでの間は無言であったのだ。
 お互いタクシーの中でわたしは
 これでいいの、いいのよね…
 と、必死に心の中で自問自答を繰り返していた。
 そして多分オリオンは、このわたしの行動の意味を一生懸命に考えている様であったのだ。
 だが答えがちゃんと出ないままにホテルに到着してしまい、あの夜の流れに沿ってチェックインを済ませたのである。

 しかしそんなお互いに迷いながらも部屋に着いてドアを閉めた時であった。

 バタン…

 そのドアの閉まる音を聞いた時おそらく二人同時に欲情のスイッチが入ったのだろう、わたし達は無言で欲情の視線を交わし、抱き合い、引き寄せられるかの様に唇を貪り合ったのである。

「あ…ん…」
 あの夜を経験していたから、今更わたし達にはもう言葉が要らなかったのかもしれない。
 この時の心の中には、このオリオンを呑み込み、征服し、再び崇めさせるのだ、という支配欲からの欲情の想いが昂ぶっていたのである。
 そしてオリオンにとってはあの夜の再現と、わたしがさせてくれるのだ、という餌が目の前に再びぶら下がっているのであろうとオリオンの目を見て理解ができたのだ。

 わたしの欲情の想いの中には支配欲からのサディスティックな衝動が湧き起こっており、オリオンの目からはわたしという餌を欲するマゾヒスティックな光りが感じられたのである。
 そしてわたしの思考はそんなサディスティックな衝動に支配されていくのだ。

 わたしは交わしていた唇を離し、あの夜の様に目の前に立った。

「さあ、脱がせて…」
 そう言って両手を広げる。

「あ、はい…」
 オリオンはわたしのブラウスのボタンを外していく。
 そのボタンを外す指先が心なしか震えている様にも見えたのだ。
 
「さっ、ここも…」
 ブラウスのボタンを外し終えたから、わたしは横を向きスカートのチャックを降ろさせる。
 スッとスーツのスカートが足元に落ちた。
 するとわたしはボタンの外れたブラウスとストッキングだけの姿となったのだ。
 そして鏡台の椅子に座り、スーっと下僕の様にひざまずいたオリオンの目の前にストッキング脚を伸ばしていくのである。

「はい、今度はこれね」

 その言葉に導かれ、シャンパンゴールドのハイヒールを両手で掴んだ…




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