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シャイニーストッキング
第6章 黒いストッキングの女5     課長佐々木ゆかり
 86 再びの葛藤

 再びわたしの中で葛藤が始まったのだ。
 
 例え言い訳であったとしても、わたしの心の中には浩一さんしかいないし、この方法しかなかったのよ…

 またそう詭弁を言う…

 だが本当にそうなのだ、この方法しか浮かばなかったのである。
 そして現に今、再会してからのオリオンという認識は既にわたしの中では武石健太に変わっているのだ。
 これが過去の負の遺産である黒歴史の一つを乗り越える事ができ、一つの重しを外せたといえる事なのではないのだろうか。

 今、心は少し軽くなっている…
 オリオンが武石健太という認識に変わった事は成功といえるのだと思われる。
 例え間違った方法であったとしても、もう、やってしまった事なのだ。

 そしてもし、この先、これが間違った方法だったとわかった時には

 修正すればよいのだ…

 そう、わたしは開き直ったのである。

 もういつまでもぐだぐだと考えても仕方がない、どのみちこの武石健太とは来週からは一緒に仕事をしていかなくちゃならないのだ。
 これから先も今日の昼間の派遣会社の遠藤タカシのように、また再び過去の遺産である黒歴史の一つの輩と出会うかもしれない、だが、今回のこの武石健太を乗り越えられた事を自信にして、この先も乗り越えていけばよいのである。
 それにあの過去からは既に約8年が過ぎているのだ、たまたま今日、突然現れ、蘇っただけなのだ、この先にまた出会うとは限らない。

 わたしは開き直ったのである。
 この開き直り、切り替え、そして強気、それらがわたしの持ち味であり、それらを武器にここまでキャリアアップしてきたのだから。

 大丈夫、わたしはこの先も過去などに囚われはしない、前を向いて進むのだ、そして
わたしには愛する大原浩一部長が付いている、彼と共に進むのだ…
 わたしはシャワーを浴びながら自身の心の葛藤にそう決着をし、前向きに行くことを心に誓うのだ。


「あらっ、起きたの…」
 シャワールームからバスローブを纏って出てきたら、健太がベッドの上で放心状態で上体を起こしていた。

「あっ、は、はい…」
 まるでまだ、さっきの射精の絶頂感の余韻に浸っているかの様な惚けた顔をしている。

「健太は泊まっていくのかしら、わたしは髪乾かしたら帰るわよ」






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