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シャイニーストッキング
第6章 黒いストッキングの女5     課長佐々木ゆかり
 95 愛しい男の声

 わたしはさっきまでのうちと契約している各人材派遣会社の営業マン達との会議を終えて、大原部長に電話をする。
 それには二つの意味があった。
 一つはこれまでの経過報告であり、もう一つは声が聞きたくて、話しをしたくて、堪まらなかったからである。

 愛しい男の声が聞きたくて堪まらない…
 一昨日の夜の昂ぶりのせいなのかもしれない、それとも昨日の色々な出来事からの昨夜の昂ぶりのせいなのかもしれない、とにかく部長の声が聞きたくて、話しをしたくて、心が我慢の限界を迎えてしまっていたのである。
 いわゆるクルマの燃料切れと同じ様であるのだ。


「もしもし、あ、ゆかりです…」
「うん、どうした…」
 部長の声が聞こえた瞬間に心が震える。
 そして脳裏に部長の顔が浮かんでくるのだ。
 たった1日振りなのに、色々あったせいなのか心の昂ぶりも感じてしまうのである。

「会議が今終わって……」
 朝イチから続いている会議の2個目がようやく終わり、今から昼食だと言った。

「それは大変だな、ご苦労様」
「ありがとうございます、でも仕事ですから…」
 そして一通りの会議の報告をする、これは新規事業計画ではなくコールセンター部での新規業務案件の報告なので、あくまでも統括部長としての経過を聞くのみである。
 そしてこうした仕事の一方的なわたしからの話しなのであるのだが、なぜか心が昂ぶってしまうのだ。

 これが愛情なのか…
 わたしはそう思っていた、そして話しを続ける。

「そしてこの後はお台場にあるテレビ局に行って…」
 今日はお台場のテレビ局、明日は朝イチから赤坂と、東京タワーのテレビ局との会議をこなし、更に帰社後に営業課との会議三昧なのだと、半分、愚痴も混ぜた内容を部長に一方的に話していく。
 この1週間、本社絡みのM&A買収の吸収合併による新規事業に加え、本来業務の新規案件という激務が今、わたしと部長の2人の間に存在しているのだ。
 そしてわたしと部長はこれらの責任感で、一蓮托生となっているのである。
 わたしはやらなくちゃいけない、という使命感でいっぱいであったのだ。
 だが、2人で共に勧めていくという事にも嬉しい思いがあったのである。

 だからこうして声を聞き、会話を交わす事でも心を昂ぶらせ、震わせてしまうのかもしれなかった…






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