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シャイニーストッキング
第6章 黒いストッキングの女5     課長佐々木ゆかり
 98 父親

「あっ、そういえば、例の吸収合併の件、佐々木課長も絡んでいるのかな」
「えっ…」
 その言葉にわたしは驚いてしまう。

「もう情報は回ってるよ」
「あ、そうなんですか…」
 さすが報道部である。

「はい、わたしの直属の上司が責任者になる予定でして…」
 わたしが自動的に先頭となって勧めるカタチとなるという旨、を話すと
「ほおぉ、その若さで大したモンだ、馬鹿息子もいい上司の下で仕事できてるんだなぁ…」
 そうお褒めの言葉を頂いた。

「ま、あまり関連はなさそうだが、せっかくのこうした縁なんで、今後何かあれば協力しますから…」
 何でも言ってくれ、と、いう大変ありがたい言葉まで言って下さったのだ。

「ぜひ、こちらこそよろしくお願いします」
 わたしはもう一度深々と頭を下げて退席したのである。


「もお、杉山くんのお父上、素敵じゃないのぉ…」
 わたしは嬉しくてそう彼に言う。

「そうっすかぁ」
「うん、素敵よ…」
「でもあれっすね、本当に偉いんすね…」
 初めて知ったと言うのだ。

 ま、息子なんてそんなもんか…
 でもこれで先は見えたのだ、あとは明日の二つのテレビ局に行き、同じ様に話しを勧め、とりあえずの内容を詰めていき、仮契約を結べれば後はスムーズに事は運べるのである。

「二つのテレビ局にも話し通してあるから…」

 杉山報道部局長が既に段取りをしていてくれているのだ、そう、このかわいい馬鹿息子の為に…

「よかったね、いいお父上持って」
「はぁ、そうっすね」
「ダメよ、感謝しなくちゃ」
「は、はい」
 そしてわたし達は会社に戻る。
 8月2日土曜日午後5時20分であった。

「あら、直帰しなかったんですか」
 わたしと杉山くんの姿を確認し、笠原主任がそう言ってきたのだ。

「はい、まだちょっとやる事があって…」
 だから笠原主任は先に帰って大丈夫ですよ、と伝える。

「はい、ありがとう、でも課長も昨日の事もあるから…」
 無理せずに、と優しい言葉を掛けてくれたのだ。

「それに今日は土曜日なんで子供は旦那に頼んであるから…」
 そうにこやかに話すのである。

「そうなんですかぁ」
「そうなの、久しぶりに気楽なのよ」
 その時わたしは閃いたのだ。




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