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シャイニーストッキング
第6章 黒いストッキングの女5     課長佐々木ゆかり
 105 普通の女

 わたしって本当は寂しい女なのかな…
 大黒埠頭辺りの流れる夜景を見ながらそう思っていた。

 違う、そう思うことが普通なのよ、わたしはようやく普通になってきているのよ、それも…
 
 それは
 大原浩一部長のおかげなんだ
 部長によって本当の愛を知ったせいなのだ…
 そう思った瞬間に急に胸が再びザワザワと騒ついてきた。

 ああ、部長に逢いたい、抱かれたい…
 その衝動が心に急激に湧いてきたのである。

 そうだ逢いに行こう、抱かれなくてもいい、顔が見たい、声が聞きたい…

「あっ、運転手さん、やっぱり…」
 行き先を変更しようと思った。
 だがふと運転席のメーター周りにある時計が目に入り、時間が気になった。
 すると時刻は既に午前零時を過ぎていたのだ。

 そうだ部長は、浩一さんは、今日は久しぶりにゆっくり出来ると言っていたのだ、疲れていて午睡までしていた…

「あっ、ごめんなさい、やっぱりいいです、羽田ICで…」

 じゃあせめて電話して声を…
 しかし、もし寝ていたら起こししまう、時刻は深夜零時過ぎなのだ、銀座のクラブにでもいるならば全然問題ない時間であるのだが、多分今夜は自宅にいる、そして寝てしまっている可能性は大きいのだ。

 せっかくの休息を邪魔したくはない…
 わたしはそう思い直し、心の衝動を必死に抑えるのである。

 我慢する事も愛なのだ
 多分、きっと愛なんだろう…

 わたしはこうして我慢をし、我慢をする事でようやく普通の女になっていくのだと思えてきていたのだ。

 そうよ、わたしだって休日返上でまた明日の朝イチから会議、そして赤坂と東京タワーのテレビ局に行かなくてはならないのだ…
 寝不足のむくみのある顔では行きたくはなかったのである。

 我慢して帰って寝よう…
 そう、我慢が肝心である。
 我慢することが普通の愛の第一歩なのだ。

 もし眠れなかったら…

 眠れなかったら。

 またサクッとバイブでオナニーしちゃおう…
 これが普通なのだ、愛に我慢は普通なのである。

 わたしは普通の女になる、なれる、なるのだ…

 流れ過ぎて行く首都高の夜景を見ながら、わたしはそう思っていた。






 
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