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シャイニーストッキング
第6章 黒いストッキングの女5     課長佐々木ゆかり
 106 それぞれの日曜日①大原部長

  8月3日日曜日午前3時40分


 そうだ、これからは、ワイルドに尖って生きていくのだ…

 そして思う

 何てことはない、ただもう1度、昔のあの頃に戻ればいいだけの事さ…

 私はベッドで4度目の絶頂感を迎えて寝落ちしている、この若くて、美しく、魅力的である銀座のクラブの女である、松下律子を見ながらそう思っていたのである。
 そして携帯電話の画面を確認した。

 8月3日日曜日午前3時40分
 着信は無い。

 なんとなく夜中に、しかも律子を抱いている最中に、まるで盗聴器でも仕掛けているのかという位に勘のよいゆかりからの電話がある様な気がしていたのだが、着信履歴は無かった。

 さすがに会議三昧で疲れて寝てしまったのだろう…
 そうゆかりの事を思ったのだが、今は昼間に散々苛まれてきたあの罪悪感が湧いていないことに気付いたのだ。
 それは律子を抱いていた時に、これからは昔の様にワイルドにそして尖って生きていくのだ、と開き直ったからなのであろうと思われた。

 いいんだ、これでいいんだ、そう尖って生きると決めたのだから…
 今度は罪悪感が湧かない開き直れた自分に、そう言い聞かせていく。

 そして私は寝落ちしている律子を横に、着替えを始めたのだ。

「………あぁ………んん…」
 すると着替えの衣擦れの気配を察知したのであろうか、律子がふと目覚めたのである。

「おっ、起きたのか…」
 やはり律子も勘の鋭い女なのだ。
 こんな僅かな気配でもスッと意識を戻してくる。
 さすがだ…

「……は、はい……あ、ごめんなさい、余りにも気持ちよかったもので…」
 そう呟く様に言い、私の着替えている姿を確認し、少し哀しそうな表情をしてくる。

「……帰る……んですか…」
 声のトーンが下がった。

「うん、すまない、明日の昼前にちょっと野暮用があるんだ……」
 咄嗟に嘘をつく。

「……そうなんですか…」
 そう溜息の様に呟く律子の目が、まるで私の心を覗いてくる様であるのだ。

 その目が
 違うでしょう、あの女課長でしょう…
 と、訴えてくるのである。

「ま、また、今度ゆっくりするよ…」
 尖る筈なのだがまだ尖れ切れていないのだ、律子の目に思わず怯んでしまう程にまだ弱く、甘かった。






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