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シャイニーストッキング
第6章 黒いストッキングの女5     課長佐々木ゆかり
 111 それぞれの日曜日⑥ 蒼井美冴

  8月3日日曜日午前1時30分

 わたしは一昨々日から昨夜にかけての約3日間で起きた衝撃的な、激動の出来事の興奮もあってなのか、なかなか眠れないでいた。

 一昨々日の木曜日に通勤途中の電車の中で、今迄頭の片隅の更に奥深くに封印し、しまい込んでいた想いと、抑制していた欲望と、無くした希望という絶望感が、突然に覚醒したのである。
 そしてそこから一気に現実へと戻り、なんとあの突然の悲劇
『阪神、淡路大震災』
 で、亡くなった元婚約者の墓参りまでをも一気に済ませるという激動の2日間を過ごしたのだ。
 そして3日目に当たるその夜に、職場の上司である大原浩一部長と偶然に思い出のカフェで出会い、その亡くなった元婚約者のゆうじからの不思議な導きとしか考えられない様な必然的な流れによりその部長に抱かれ、そして抱かれた事によって今迄ギリギリまで押さえ、抑制していた欲望を全て解放し
 ついに
『黒い女』
 からも卒業するという激動の一夜を過ごしたのである。
 それはこの約2年間、『黒い女』として喪に服す、という想いで惰性的に生きてきていたわたしの心を再び復活させ、僅かに小さな灯り的な希望を新たに持たせてくれるという再生の一夜であるといえるのだ。

 そしてそれらの、覚醒、解放、復活からの新たな希望、再生という事が出来たのは、今迄歩んできたわたしの人生の中での脚フェチ、ストッキングフェチという過去の男達から植え付けられてきたフェチシズムという、つまりは性の嗜好による影響によるモノがかなりの比重を占めているといえるのである。
 そんな植え付けられてきたフェチシズムによって、わたしは新たに再び生き返ったといっても過言ではないのだ。

 それらのせいもあってなのか、復活の想いを自覚した今朝、つまりは土曜日の朝からずっと心と気持ちが興奮し、昂ぶり続けていて眠れないのだ、と、思われるのである。

 ああ、なんかザワザワ、ドキドキ、ワクワクとして眠れそうにもないわ…
 そう思い、少しでも眠れる様にと寝酒に赤ワインを飲んだのであるが、そのアルコールの高ぶりが却ってこの心の昂ぶりを刺激してしまっていたのだ。

 そしてその昂ぶりのままに今朝の事を想い返していく…

「美冴くん宅はどの辺りなんだ」
 ホテルをチェックアウトした部長がそう訊いてきた…




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